時、遡る「白亜の天使」







「今日から、ここで生活をしてもらう。あくまで今はガンダムマイスター候補であり、まだ正式認定が降りていないことを忘れないでくれたまえ」
CB構成員は、そういってまだ20前だったロックオンをCB研究所最大の秘密基地の生活区域に案内した。
「それから・・・・代表がおられる区域と、その先へは立ち入り禁止だ」
「分かりました」
ロックオンは、誰よりもはやくガンダムマイスター候補としてCB構成員になった。あくまで、候補であって最終的な認定がおりるのは2、3年先の話である。
他にもガンダムマイスター候補らしき者は数人いて、その中にアレルヤ、刹那の姿もすでに混じっていた。ガンダムマイスターから最終的に外されたものは、それまでの記憶を奪われて外の世界で生きるか、一生CB構成員として生きるかの二択しかなかった。
秘密主義でなりたっている機関では、仕方のないことだったのかもしれない。

「僕、アレルヤっていうんだ。君は?」
「俺はロックオン。ロックオン・ストラトス」
食堂で、ロックオンは自分よりも4歳くらい年下の少年とであった。とても人懐こそうな性格で、すぐに友人になった。
「バッカじゃなういのか、浮かれて」
他のマイスター候補とは、おりが合わなくていつもケンカ寸前のところまでいった。
アレルヤという少年は15歳で、まだまだ子供だった。自分もまだ未成年であるが、こんな少年がマイスター候補にするCB期間というものに、少しの不安を抱いた。
その不安が大きくなったのは、刹那・F・セイエイという11歳の少年と知り合った時のことだった。
本当に、子供だった。
大きなルビーの瞳をした、生傷の耐えない子供。
他のマイスター候補たちといざこざを起こしては、よく独房に入れられていた。
ロックオンは、刹那の姿が自分の少年時代に重なり、何かあるごとに刹那を庇い、匿ったりケンカがあれば混じって一緒に独房入りになったりした。
「ばかじゃないのか、あんた」
刹那という少年はとても冷めた目をしていた。
本当に、CB機関は何を考えているのだろうかと思った。いくらなんでも、武力介入する時点でも16歳前後だろうに、この年齢ならば。
若ければいいというものではない。若いほど、過ちに走りやすいものもある。

ある日、また刹那がやらかした。
アレルヤは混ざることはなく、匿うほうで、混ざらないだけ思考はロックオンより大人だ。
立ち入り禁止区域の代表が居る更にその先に侵入したのだ。
大人たちはかんかんに怒っていた。刹那はまだ独房に入れられた。CB構成員たちが、「あれを見られたぞ、どうする?」「ほうっておけ、子供の力では何もできないだろう」と会話していたのを、ロックオンは覚えていた。
独房から出た刹那は、マイスター候補としての成績は素晴らしく、問題児であるが未だにマイスター候補から外れることはない。どんどんマイスター候補の人数が減っていくなかで、刹那は常にトップの成績を誇っていた。無論、アレルヤ、ロックオンも負けていない。

そして、ある日刹那が誘ったのだ。
「禁止区域の先の地下に白亜の天使が捕らえられている」と。
はじめは本気にしなかった。だが、何度もしつこくいわれ、ガンダムマイスター候補としては常にTOP3の成績に入っていたロックオンは、興味をそそられてアレルヤも言いくるめて、三人でまた禁止区域に入った。

そこで、みたものは。

とらえられた白亜の天使。

独房などとは完全に違う、檻ともいえる牢屋に入れられた、白すぎる肌に長い銀髪、それに紅の瞳をもったアルビノの少女だった。
「また来てくれたんだ」
牢屋の中の少女は、嬉しそうに刹那に手を伸ばす。
「絶対に、出してやる」
「ありがとう。その気持ちだけで、十分だよ」
ロックオンの中で、何かがはじけた。


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