「この間はコロニー連合軍と地球軍がぶつかりかけて、えらいめにあったよ。全く、人類というものはいつまでたっても争いをやめようとはしない。CBのお陰で、戦争などという最悪の事態は回避できたが。それについては本当に感謝している、刹那」 「人は宇宙に進出し、異種にあっても争いをやめない。これはもう、人のさがなのかもしれない」 「そうだな」 宇宙総帥であるリジェネは、昔を懐かしむように思い出す。 「ああ、昔に戻りたい。皆がいたあの頃に」 「叶わぬ願いだ」 CB代表である刹那・F・セイエイはリジェネよりも前向きの姿勢でいる。 そうでもなければ、地球だけでなく宇宙という空間にあるコロニーにまでいつ起きるとも分からぬ火種を絶やすことなどできはしないだろう。 「そういえば、新しいガンダムマイスターに、ディランディ家の名を持つ者がいるそうだな。ライルの子孫にあたる血脈か」 「ああ。ディランディという響きさえ懐かしい。ロックオン・ストラトスの名は、だが与えなかった」 「そのほうがいいだろう」 「金髪、碧眼の20歳の男性だ。かつてのロックオンには似てもにつかない」 「名前を与えると、あの子が哀しむ」 「まだ、総帥補佐になることへの返事はきていないのか」 「一時期は宇宙総帥を僕のかわりにしていたからな。僕がコールドスリープで眠っていた50年間と、もう100年ほど」 「時間の感覚がおかしくなるな。生きていると」 「仕方ない。イノベイターの宿命だ」 「あの子は・・・・転生を信じているそうだ。だから、ずっと待っている。今も、ずっと」 「リジェネの傍にいたほうが、幸せだと俺は思うのだがな」 「そうか?僕は刹那、君の傍にいたほうが幸せだと思っている。実際、60年間はずっと一緒にいただろう」 「ああ。だが、ずっとかわらなかった。俺たちの関係は。どれだけ時がたとうとも、その想いは変わらないと言っていたからな。トレミーの皆が死んでいくのに耐え切れず、地球に降りて・・・・それから数年後、宇宙総帥になった。だが、いつも遠い目をしていた。そう、哀しい瞳だ」 「イノベイターに幸福はないのかもしれないな」 「幸福か」 刹那もリジェネも、沈黙する。 「もう会っていないのか?」 「ああ。昔を思い出すからと・・・会ってくれない」 「そうか。僕と同じだな」 運命とは、かくも残酷である。 未来とは、かくも闇に包まれている。 人でありたいと願うほどに、人ではないイノベイターの宿命は重く圧し掛かる。 「今度、僕の総帥就任130年記念のパーティーが開かれるんだ。招待状を出しておいたけれど、こないだろうな」 「こないだろう。人でさえ寿命が150年になったこの世界で・・・・それでも、イノベイターは不老不死であるが故に異色だ。かつての宇宙総帥として生きていた彼は、ただひたすら新しい世界を求めていた。いや、巡り合うべきその命か」 リジェネの髪は、膝まで伸びている。 色素を抜いたせいで、髪は金色になっていた。 「あの子のコールドスリープを解いたのは間違いだったのかもしれない。あのまま、眠らせておいたほうが本人にとっては幸せだったのかもしれない」 リジェネは、涙を流し始めた。 「リジェネ・・・・」 「だが、コールドスリープもあまりに長い間だと生命活動が停止してしまう。目覚めさせるしかなかったんだ。あの子はわざと不完全かカプセルで眠りについた。あのままほうっておけば、完全に死んでいただろう。眠りの場合、スペアに精神はいかない。意識体の死は、僕たちイノベイターであり、イノベイドである者にとっては本当の死を意味する。死なせたくなかったんだ」 NEXT |