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「ごめんなさい、失礼します!」
バーバラは、ティエリアを抱きしめた。
いきなりのことで、ティエリアは身動きがとれなかった。
伝わる人の熱。
バーバラはイメージした。この人に、どうか見えるようにと。
「ニー・・・・?」
バーバラの背後に、確かにニールが見えた。
「え・・・・」
「私、祖父が異種の血を引いていて特殊な力があるんです!あなたに伝えたい言葉を、ずっと持っているとニールさんという方が」
ティエリアが石榴の瞳を瞬かせる。
確かに、宙にニールが浮いていたのだ。透けた体で。そう、もう何百年も前に宇宙に散るより前の普段着で。
「ニール?」
「聞こえるか、ティエリア」
「ニール!!」
ティエリアは、バーバラに右手を掴まれたまま、虚空に手を伸ばす。
何度伸ばしても、ニールの体は透けていて掴むことができない。
「聞こえてる、良かった。ずっとずっと、愛してる。今までもずっと傍で見守ってきた。異種の言葉は気にするな。俺は、何回か転生したんだ。でも、記憶がなかった。だから、今も・・・・コロニー3210に俺は住んでいる。記憶はないけど・・・・転生はもうしてるんだ。記憶がないから、会いにいけなかった。なぁ、それでもいいなら、俺と生きよう。もう一度」
「ニール!!」
ティエリアは何度も虚空に向かって手を伸ばす。
泣いていた。
「あなたが、あなたが、この世界にいるのですか!」
「ああ、いるよ」
ニールの霊は、ティエリアを抱きしめた。
不思議と、エメラルド色の光が溢れる。バーバラにそんな力はない。ティエリアにも。
それは、ニールの魂の力だろうか。
「一瞬の永遠。それが今」
ニールは、優しくティエリアの頭を撫でた。
ほぼ物質化したニールは、ただティエリアを抱きしめる。
「あなたが、あなたが・・・・いるなんて」
ティエリアはしゃくりあげていた。
「もうこの世界では永遠に会えないと思っていたのに」
「ここが、俺が今生きている場所」
ニールがティエリアの脳にイメージを送る。
「迎えにきてくれ。きっと、お前に会ったら全て思い出す」
ニールの体が透けていく。
「いかないで!」
「大丈夫。俺は、その場所にいるから」
バーバラは、ずっと泣く前宇宙総帥閣下の肩を抱いて落ち着かせた。
そう、この人も一人の人間なんだ。
バーバラは思った。
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