光の岸辺に建てられた小さなクラブハウスで、ロックオンとティエリアはそこの家のベッドで丸くなって二人で眠った。 こうして二人で一緒に眠るのは、もう5年ぶりだろうか。 ロックオンの手のグローブは、ティエリアが脱がした。もう、彼がこの世界で銃を握ることはないのだ。 そんな世界にはもうさせない。 そのために、皆で誓い合ったのだから。 そう、生き残って世界を変革していくと。 刹那。 君は知っていたんだな。こうなることを。 だから、僕に強制的に「帰って来い」とは言わなかった。 刹那。ありがとう。 世界の記憶の一部を、真のイノベイターの力で「見た」刹那は、ティエリアに何も告げずにティエリアの自由にさせていた。 その世界の記憶がティエリアを照らし、ティエリアがどういう選択をとるかも、刹那は全てティエリアに委ねたのだ。 「ん・・・・朝か?」 「この世界に朝も昼も夜もない」 ティエリアは、ロックオンの腕の中で、彼の腕に手を這わせながらゆっくりと瞼を開く。 石榴色の瞳は、金色の海と同じ色。 「そうだな。温度もない。ティエリアは暖かいけど」 「あなたのほうが暖かい」 ティエリアは、擦り寄るようにロックオンの胸に顔を埋める。 「愛してる」 「もう少し寝とけ・・・・」 「はい・・・」 ティエリアは、毛布を被せられ、また一緒にロックオンと眠りに沈んでいく。意識体でも眠るのだ。 次にティエリアが起きた時、ロックオンはベッドの上にはいなかったが、キッチンから何かを料理する音が聞こえてきた。 ティエリアの体は透けていたものがしっかり物質化して世界に構成されていた。無論、ロックオンも。 ロックオンのシャツを羽織って、キッチンに向かう。キッチンの椅子には、ジャボテンダーさんが座って笑っていた。 「ティエリア、ティエリア、ここに座って、座って」 ジャボテンダーさんが、笑って声を出して動いている。 ティエリアは嬉しくて、ジャボテンダーさんの隣に座った。 「ティエリア大好き!ティエリア大好き」 「僕も大好きですよ、ジャボテンダーさん」 「はいはい、朝飯?ってか昼飯?ってか夕飯?ってか時間がないから分からないけど料理できたぞ」 ティエリアとジャボテンダーはそろってお皿を持って、料理を受け取る。 「おいしいよ」 ジャボテンダーさんは、おいしそうにスクランブルエッグとコーンポタージュとサラダを食べていく。 「このメニューだと、朝食ですね」 「そうだな。まぁ、起きたばかりだし」 「ジャボテンダーは、いつでもティエリアを見守ってるよ。トレミーにいるからね」 ジャボテンダーは、トレミーという言葉を強調して、動かなくなってしまった。 「ロックオン」 「なんだ?」 「愛しています」 「俺も愛してるよ」 二人の指には、昔かったペアリングが光っていた。 そうだ。 ロックオンは、ペアリングをはめたまま逝ってしまったんだ。 ティエリアは、涙を新しく一つ零した。 NEXT |