静かなる海「この一瞬が永遠であれば」







「俺がなんでここにいるかは、分かるよな?」
「はい」
ロックオンに抱きしめられながら、ティエリアは金色に光る海を窓から見ていた。
「俺とずっとここに一緒にいられるっていったら?ティエリアは、どっちを選ぶ?」
「それは・・・・」
ティエリアが、言葉を濁す。
「ずっと、この世界で二人きりで過ごせるって言ったら、どっちをとる?」
「愛しています・・・・未来を、仲間をとります」
涙を零しながら、ティエリアは眼鏡をテーブルの上に置いた。
「いい子だ」
頭を優しく撫でられる。
ずっとそうしていたい。
永遠に、このままでありたい。
この一瞬が永遠であればいいと願った。
時よ、どうか止まってくれ。
時よ、どうか凍りついてくれ。
氷の中だっていいから。
あなたと一緒なら、冷たくもいたくもない。

ねぇ。
愛しています。
愛して、いるんです。こんなにも、こんなにも。
感情が全て、あなたに向けられる。あなたがいるから僕がいる。
そんな錯覚を起こすくらいに。
愛しています。

世界の時は止まらない。
刻々と時間を刻み続ける。

ティエリアは、いつもの制服に着替えた。ロックオンも、ライルと同じ制服姿になる。
「やっぱり、似合ってる。一度でいいから、あなたの制服姿が見てみたかった」
「おかしな奴だな。ライルと同じ顔してるんだから、ライル見ればいいだろ?」
「ライルはライル。あなたはあなた」

その時、ヴェーダへのアクセスがあった。
(ねぇ、お願い帰ってきて。答えて、ティエリア)
ティエリアは答えを返す。
(お願い、もう少し待って)

もう少し、待って。
もう少しだけ、このままでいさせて。
お願い。

「刹那は道を選んだ。ライルもアレルヤもみんな・・・道を選んだ。さぁ、ティエリア」
「もう少しだけ、このままで」
ティエリアは、ロックオンを押し倒すと、唇を塞いだ。
そのまま、二人はもつれ合ってお互いを抱きしめあいながら、互いを見つめる。
綺麗なエメラルドの瞳は昔と全くかわっていない。宝石のような光。そう、この光をまといながら、このひとは物質世界から「いなくなった」のだ。


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