とりあえず、ティエリアを落ち着かせてベッドに座らせた。 「むー」 ティエリアはジャボテンダーを抱きしめて、臍を曲げている。 ぎゅっと抱きしめられたジャボテンダーに、今日はロックオンの趣味なのか、いつもの私服ではないユニセックスな服をきた上に、髪は二つにくくられて、ブルートパーズの忘れ名草の髪飾りをしている。 どこか外出してきて帰ってきたところなのだろう。そんな姿だ。 ふてくされて足をぶらぶらさせているティエリアは、ドクター・モレノから見ても、こんなかわいい生き物がいていいのかと思うくらいにかわいい。かわいいんだから仕方ない。 「まぁそんなすねるなって」 「じゃあキスしてください」 そんなことを平然といってのけるティエリア。 「はいはい」 それを平然と受けるロックオン。 ティエリアの前髪を掻き分けて、おでこにちゅーをする。 それだけで、ティエリアは機嫌が直ってしまった。まったく、このバカップルは。 「で、一体なんの用事できたのか思い出したか?」 「思い出した」 ティエリアは、持っていた袋を取り出した。そこから出された品に、ドクター・モレノは絶句する。 ジャボテンダー柄がプリントされた白衣だった。 そういえば、白衣の残りがなくなったと思ったら。こんなところに束となって積み上げられた。 ああ、俺の神聖なる白衣が。 これもう白衣じゃないじゃないか。白衣とは、白いから白衣であって、柄があっては白衣ではない、しかし目の前のこれはジャボテンダー柄の白衣なので一応白衣なの白衣、おい白衣、聞いてるか白衣、答えろ白衣こんちくしょう!(ドクター・モレノ混乱中) ぜぇぜぇ。 ちょ、まじで簡便してください。 目の前には、にっこり笑顔な魔王のティエリア。 「かわいいでしょう?ドクター・モレノの白衣、ジャボテンダー柄にしてもらった」 いや、確かにかわいいです。はい。かわいいです。 でも、これきて働けってのか!これ来て、戦場のような流血沙汰に立ち向かえと!シュールですよシュール。 ジャボテンダー柄のマグカップをティエリアからもらったことはあった。何気に診察室のスリッパはジャボテンダー柄だ。 シーツと枕カバーまでもらったけど、流石に使う気はおこらずに保管したままだ。 「ジャボテンダー・モレノ。今日からそう名乗るといい」 なんかわけのわからない名前きました! ジャボテンダー・モレノ。 ジャボテンダーの一種ですか? 「おいこらロックオン、こうなる前に止めなかったのか!」 「いや、止めたってば。それに、これ洗えば落ちるから」 そうなの。あら、意外。洗えば落ちるのか。ならいいや。 ドクター・モレノの思考は常に前向きである。 (ドクター・モレノと接した人々談) 「さぁさぁ、着てみて」 ずいずいと、ジャボテンダー柄の白衣を持って迫ってくる魔王ティエリア。こんなかわいい魔王がいていいのか。ジャボテンダー柄の白衣を持って迫ってきながらも、両手が塞がっている時もジャボテンダーと接することができるようにと、背中にジャボテンダーをくくりつけている。くくりつけるか、普通。いや、ティエリアならするな。 「ジャボテンダーさんも似合うっていっている。大丈夫だ」 ドクター・モレノ、改名してジャボテンダー・モレノになりました。 「ジャボテンダー・モレノ。似合っているぞ」 「あいよ」 「大将、ばっちりだな。ジャボテンダー・モレノ、ここに生まれる」 いや、生まれたくなかったです、はい。 ジャボテンダー柄のスリッパをはいて、ジャボテンダーの白衣をきたジャボテンダー・モレノ。 主食はあれですか、やっぱりメロンソーダ?それとも水?それで光合成するんだよね。日光に当たらないとだめだな。あ、でも俺の体の中に、期待しても葉緑体はないぞ。 NEXT |