「〜〜〜よう、モレノ、暇か」 トレミーでも昔から顔なじみで親友のイアンがやってきた。 診察室のドアをあけて、イアンは謝った。 「すまん。見てはいけないものを見てしまった」 「まてまてまてええええええ」 イアンを診察室の中に引きずり込むモレノ。 だって、ドクター・モレノ、じゃなかったジャボテンダー・モレノはジャボテンダーの白衣をきてスリッパをはいて、頭には殿様のヅラかぶって、背中にミニジャボテンダー背負ってた。 イアンはそういうプレイなのだと思ったのだ。どういうプレイだ、どういう。いや、見たまんま? 「イアン、イアンも服ジャボテンダー柄にしたくなったか?」 ティエリアの言葉に、イアンは太陽のように朗らかに笑いながらも否定した。 「いや、そんな嬉しいことされたら、おっさん嬉しすぎて仕事に力はいんなくなるから。ガンダムの調整できなくなっちまう」 イアンはティエリアの扱い方が上手だ。 今度、マニュアルでも作ってもらうか。 「そうか、それでは仕方ないな。イアン、いつもガンダムの調整ありがとう。それから、この前の戦闘のデータ解析が終わったので後で届けておく。ガンダムヴァーチェとエクシアの調整結果を後で聞きたい。次の戦闘までに、特にエクシアはメンテナンスが完全でなければならない。ミス・スメラギからもらった次の戦術プランとあわせて調整していこう」 ティエリアは、戦術予報士であるミス・スメラギの頼もしい右腕でもあり、そしてイアンの頼もしき友でもある。ガンダムで問題がおこれば、イアンはまず最初にティエリアに報告する。ティエリアはその問題を解決していく。 ある意味、パートナーに近いのかもしれない。ガンダムに関する知識はマイスター全員にあるが、ティエリアは他のガンダムの戦闘解析や動くパターンさえも記憶していて、ここを調整すればこうなる、という答えがティエリアには分かるのだ。イアンも言っていたが、ティエリアは整備士としても一流でやっていけるという。 本当に、トレミーでも貴重で頼りにされているティエリア・・・に、今殿様のヅラかぶされて、ジャボテンダー・モレノとなったモレノはミニジャボテンダーの子守りまでさせられている。 「じゃ、おっさんは忙しいから帰るわ。モレノ、達者でな。南無阿弥陀仏」 イアンは本当に太陽のようだ。 そう、トレミーの太陽。みんなを明るくさせてくれる。とても頼もしい人物でもあり、いつも明るくてせっすると明るくなる。イアンはよく、仕事で疲弊したモレノのところに訪れて、会話をして心を癒してくれる。誰でも、イアンを好いている。トレミーの中で、イアンを嫌いな者など皆無だ。 それはティエリアも他のガンダムマイスターも同じだが。 ティエリアがよく「南無阿弥陀仏」って唱えてるから、イアンにも知らない間にその台詞が移っている。本人気づいていない。恐るべし、ティエリアシンドローム。 ティエリアは、とてもかっこよかった。ドクター・モレノもロックオンでさえも、別人だと思うほどに仕事関係に関してのティエリアは本当に人間が変わる。 イアンはもう去っていった。 「じゃ、続きから。はい、バカ殿の番!」 ティエリアから、ドクター・モレノはバカ殿と呼ばれた。だって、コマに「ヅラをかぶってバカ殿になる」ってのがあったから、強制的にバカ殿にさせられた。 何してるのかっていうと、床でティエリアとロックオンとドクター・モレノは座って「スゴロク」なるものをやっていた。 だが、改良版なので、ちょっとふつうのスゴロクと違う。 バカ殿モレノはサイコロを振った。その数だけモレノの姿をした小さな人形を進ませる。そのコマには「鼻からコーラ飲む」って書かれてあった。 「ちょ、これはないだろ!」 「逃げるのはよくないぜ、大将!」 頭をポニーテールにして、なぜかサラリーマンの格好をしたロックオンが、がしっとドクター・モレノの肩を掴む。 「さぁさぁ」 コーラが入ったコップをわたされる。ストローがある。そこから鼻で飲むらしい。 「ティエリア、無理だろこれは」 「大丈夫だ、ドクター・モレノならやれる!さぁさぁ!!」 ドクター・モレノ。 鼻からコーラを飲む日が人生で訪れるなんて、CBに入った頃は思いもしなかった男。 NEXT |