青春白書9







次の日、ティエリアは欠席した。
携帯に電話を入れると、かわりにアレルヤが出た。
「アレルヤ?」
「ああ、ごめんね。ティエリア、熱また出しちゃって。最近は体調も良かったんだけど。なんか、学校でいざこざ起こしたんだってね。迷惑かけてごめんね」
「いや、いいよ。・・・・・アレルヤ、気づいてたんだ?」
「そりゃね。携帯電話でまでやりとりしてるし、メールの交換もしてるし、家ではニールのことも話すし。多分始めてなんじゃないのかな、あの子が誰かに恋をするの。僕からもお願いするよ。ティエリアを大切にしてあげて」
「本気か?俺は教師でティエリアは生徒だぞ」
「うん。問題は多いだろうけど・・・君になら、ティエリアを任せられると思う」
「そうか。・・・・・・なぁ、アレルヤ」
「どうしたの?」
「この鈍感バカ!」
そう言って、ニールは携帯を切った。

あの子が恋をするのは始めてじゃないかな。
ティエリアはあんなにもアレルヤを慕い、恋をしているのに。
本人は気づいてもくれない。それで諦めれるならいいだろうが、ティエリアはアレルヤにかなり依存している。
同じ屋根の下に住んでいる以上、顔を合わさないわけにはいかない。
ティエリアはきっと、とても苦しんでいる。

「どうしたもんかね・・・・」
アレルヤに信頼されるのは嬉しいが。
「奪いきれるなら、簡単なんだけどな」
当のティエリア本人は、ニールという存在を認めて、悩み事打ち明けたり、他愛もない会話をしたり、挨拶のメールをくれたりするけど、それはあくまで対等である者としてみているからだろう。
「やべぇな・・・・俺本気かよ。24歳の男が、17歳の女の子に本気って。しかも教師と生徒。うわぁ、犯罪すぎる・・・・」
ニールは、保健室のデスクに肘をついてもんもんと悩んでいた。

次の日、ティエリアはいつもの3時間目にやってきた。
手にはまだ包帯を巻いたままだ。
「ティエリア」
「何?」
「少しは俺のこと好きになってくれた?教師としてとか友人としてとかじゃなくって、異性として」
「・・・・・わからない」
ティエリアは困ったように視線を彷徨わせている。
「アレルヤがすきなのも、依存してるのも分かるし、そこに俺が入る隙なんてないのかもしれない。でも、俺ティエリアのこと好きだ。恋してる」

ああ、ついに言っちゃった。
隠しておく気もなかったし。

「僕のことが好きなの」
「そうだ」
「同情ではなく?」
「同情じゃない。家に戻ってもティエリアのことが気になって、いつもティエリアのこと考えてる。たまに見せてくれる笑顔に心がこうキュンキュンとな。やべぇ、俺乙女だ。どうしようティエリア。俺、乙女になっちまった・・・」
「本当に僕のことが好き?」
「好きだ」
「じゃあ。じゃあ奪ってみてよ。僕の心を、アレルヤから奪ってみて。僕はアレルヤに恋してる。アレルヤが大好き。そこから僕の心をさらっていってよ」
「あーもう、お前さんは難題ばっかりふっかけるなぁ」
「あなたのことは嫌いではない」
ニールは、ティエリアの髪に、髪飾りを留めた。
「これは?」
「俺からのプレゼント」
ティエリアがアレルヤから貰ったものと同じものだった。
「・・・・・・・・・・ありがとう」
「なぁ、キスしていい?」
「いつも勝手にするくせに」
ニールはティエリアの細すぎる腰に手を回して、唇に唇を重ねた。
ただ触れるだけのキス。

少しの間抱きしめた後、ティエリアは逃げるように教室にもどっていった。
頬が赤かった。
可能性がないわけではない。
「よーし、略奪愛ね。いいとも、奪ってみせようじゃないか」
ニールも覚悟を決めた。

次の週末、ニールはティエリアをデートに誘った。
ティエリアは、誘いに乗ってくれた。

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