ティエリアは、ぎゅっと手を拳にして握り締める。 「あなたは酷い。なぜ、こんな夢を僕に与える?」 答えはすぐに返ってきた。 「お前に泣いて欲しくないから」 「こんなの、逆効果だ!」 ボロボロと、ティエリアの大きな瞳から涙が溢れ出す。光を受けて銀色に光る長い睫を伏せて、ティエリアは涙を零す。 「僕はあなたに生きていて欲しかった」 鸚鵡返しに呟く。 いろんな願いはある。 だけど、本当に心の底から願うのはたった一つだけ。 ロックオンが生きていれば、良かったのに。 「俺は、さ」 目の前のロックオンは、くしゃりとティエリアの髪を撫でる。 「俺は、帰ってくるつもりだったんだよ。ちゃんと、生きて戻ってくるつもりだった。だから、ハロに録音を残したし、戦争が終わったら本当に結婚しようとだって思ってた」 「あなたは、またそんなことを」 ボロボロボロ。 ティエリアの瞳から、また大粒の涙が溢れて頬を伝う。 その涙を、ロックオンは手ですくいあげる。 「相変わらず、泣き虫なのな?」 「あなたが、全部悪い」 「そうだな。俺が悪い。ごめんな」 「謝っても・・・・」 「許さない?」 じっと、ティエリアは隻眼のロックオンのエメラルドの瞳を見つめる。 「うー・・・・」 見つめていると、また涙が出てきた。 その場に、しまいには蹲ってしまったティエリア。 制服のポレロを脱いで、ベッドに置くと、深呼吸する。 涙をぐいっとふき取って、それからロックオンを見上げると言葉を紡ぐ。 「僕はあなたを許します。だって、あなただから。僕に許さないという選択権はありません」 きっぱりと言い放ったティエリアを前に、ロックオンは困ったようにしゃがみこんだ。 「お前の中の、俺って何?」 ロックオンはそう聞いてきた。 答えは、恋人だとかそういうものが返ってくると思っていたのだろう。ティエリアの返答は違った。 「全て。僕の、全て」 ぐいっと、ロックオンに引っ張られてティエリアは体制を崩した。 床にそのまま組み敷かれて、唇を奪われる。 ロックオンの体は透き通っているが、触れることができた。そのまま、ティエリアはロックオンの顔を挟み込んで自分からキスをする。 だんだんと、透き通っていた体が鮮明なものになってくる。エメラルド色の光を纏ったロックオンに組み敷かれて、ティエリアは髪を乱しながらもただじっと、隻眼の瞳を見つめていた。 NEXT |