たった一つの願い2







ティエリアは、ぎゅっと手を拳にして握り締める。
「あなたは酷い。なぜ、こんな夢を僕に与える?」
答えはすぐに返ってきた。
「お前に泣いて欲しくないから」
「こんなの、逆効果だ!」
ボロボロと、ティエリアの大きな瞳から涙が溢れ出す。光を受けて銀色に光る長い睫を伏せて、ティエリアは涙を零す。
「僕はあなたに生きていて欲しかった」
鸚鵡返しに呟く。
いろんな願いはある。
だけど、本当に心の底から願うのはたった一つだけ。

ロックオンが生きていれば、良かったのに。

「俺は、さ」
目の前のロックオンは、くしゃりとティエリアの髪を撫でる。
「俺は、帰ってくるつもりだったんだよ。ちゃんと、生きて戻ってくるつもりだった。だから、ハロに録音を残したし、戦争が終わったら本当に結婚しようとだって思ってた」
「あなたは、またそんなことを」
ボロボロボロ。
ティエリアの瞳から、また大粒の涙が溢れて頬を伝う。
その涙を、ロックオンは手ですくいあげる。
「相変わらず、泣き虫なのな?」
「あなたが、全部悪い」
「そうだな。俺が悪い。ごめんな」
「謝っても・・・・」
「許さない?」

じっと、ティエリアは隻眼のロックオンのエメラルドの瞳を見つめる。

「うー・・・・」
見つめていると、また涙が出てきた。
その場に、しまいには蹲ってしまったティエリア。
制服のポレロを脱いで、ベッドに置くと、深呼吸する。
涙をぐいっとふき取って、それからロックオンを見上げると言葉を紡ぐ。
「僕はあなたを許します。だって、あなただから。僕に許さないという選択権はありません」
きっぱりと言い放ったティエリアを前に、ロックオンは困ったようにしゃがみこんだ。
「お前の中の、俺って何?」
ロックオンはそう聞いてきた。
答えは、恋人だとかそういうものが返ってくると思っていたのだろう。ティエリアの返答は違った。
「全て。僕の、全て」

ぐいっと、ロックオンに引っ張られてティエリアは体制を崩した。
床にそのまま組み敷かれて、唇を奪われる。
ロックオンの体は透き通っているが、触れることができた。そのまま、ティエリアはロックオンの顔を挟み込んで自分からキスをする。
だんだんと、透き通っていた体が鮮明なものになってくる。エメラルド色の光を纏ったロックオンに組み敷かれて、ティエリアは髪を乱しながらもただじっと、隻眼の瞳を見つめていた。



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