たった一つの願い5







ティエリアは、少しだけ眠った。
目を開ける。見慣れた天井が視界に飛び込んでくる。ティエリアは飛び起きた。
「どうした?」
ソファーに、ロックオンが座っていた。
ティエリアは安堵で胸を撫で下ろした。

あなたがいる。
あなたが、ここにいる。

叶わなかったたった一つの願い。
たった一つの。
僕の全て。
存在意義。
依存するもの。

ティエリアは制服を脱いで、昔なじみの私服に戻る。
それからロックオンを残して、ロックオンの部屋に入ると、ロックオンのためだけに作った制服をとってきて、ロックオンに渡した。
「これは?」
「あなたの制服だ」
「着てもいいのか?」
「着て欲しい」
「じゃ、ちょっと着替えるわ。覗かないでね」
「バカ!」
ティエリアは頬を紅くして、ロックオンを脱衣所に追い立てた。
こんな時でも、ロックオンは人の心を柔らかくするということを忘れない。ああ、ロックオンだと心底安心した。
「んー。へぇ、かっこいいじゃないか」
緑の制服を着たロックオンに、ティエリアはぼーっと見ほれた。
「どうした、ティエリア?」
「かっこいい」
「だろ。俺って昔っからかっこいいからさー」
「万死に値する。勝手に言ってろ」
ティエリアは、ぷいと他所を向いてしまった。
「まぁまぁ。そんな怒るなって」
額にキスが降ってくる。本当に、いつものロックオンだ。そう、一年前の。

ポロリ。
ティエリアの石榴の瞳から、また涙が零れた。

彼が死んで、もう一年になるのだ。
短いようで長い。この孤独は、きっとずっと続くのだろう。死ぬまで。

「ティエリア?」
「カナリアになりたい」
「へ?」
「あなたのためだけに歌うカナリアになりたい。いつもあなたの肩に止まって、綺麗な声で歌うカナリアになりたい。あなたとずっと、時を過ごして。そして、あなたと一緒に朽ちていくんだ」
「ティエリア?」

「あなたと一緒にいきたい」
「それはダメだ」
ロックオンが首を振った。
「お前は連れて行けない」
「どうして」
「お前は生きているから」
「だったら、生を放棄すればどうなる?」
「お前にできるのか?仲間を見捨てて。誰が仲間を守るんだ。誰が刹那とアレルヤを探すんだ」
「・・・・・・・あ」
できるはずがない。
ロックオンのあとを追いたいと思ったのは、そう、あの時が最初で。
最後にしなければならないのだと、ティエリアは気づいた。
死にたいなどということは、禁断だ。仲間を守るのは、CBを率いていくのは、アレルヤと刹那を探し、その帰りを待つのはティエリアしかいないのだから。


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