ティエリアは、少しだけ眠った。 目を開ける。見慣れた天井が視界に飛び込んでくる。ティエリアは飛び起きた。 「どうした?」 ソファーに、ロックオンが座っていた。 ティエリアは安堵で胸を撫で下ろした。 あなたがいる。 あなたが、ここにいる。 叶わなかったたった一つの願い。 たった一つの。 僕の全て。 存在意義。 依存するもの。 ティエリアは制服を脱いで、昔なじみの私服に戻る。 それからロックオンを残して、ロックオンの部屋に入ると、ロックオンのためだけに作った制服をとってきて、ロックオンに渡した。 「これは?」 「あなたの制服だ」 「着てもいいのか?」 「着て欲しい」 「じゃ、ちょっと着替えるわ。覗かないでね」 「バカ!」 ティエリアは頬を紅くして、ロックオンを脱衣所に追い立てた。 こんな時でも、ロックオンは人の心を柔らかくするということを忘れない。ああ、ロックオンだと心底安心した。 「んー。へぇ、かっこいいじゃないか」 緑の制服を着たロックオンに、ティエリアはぼーっと見ほれた。 「どうした、ティエリア?」 「かっこいい」 「だろ。俺って昔っからかっこいいからさー」 「万死に値する。勝手に言ってろ」 ティエリアは、ぷいと他所を向いてしまった。 「まぁまぁ。そんな怒るなって」 額にキスが降ってくる。本当に、いつものロックオンだ。そう、一年前の。 ポロリ。 ティエリアの石榴の瞳から、また涙が零れた。 彼が死んで、もう一年になるのだ。 短いようで長い。この孤独は、きっとずっと続くのだろう。死ぬまで。 「ティエリア?」 「カナリアになりたい」 「へ?」 「あなたのためだけに歌うカナリアになりたい。いつもあなたの肩に止まって、綺麗な声で歌うカナリアになりたい。あなたとずっと、時を過ごして。そして、あなたと一緒に朽ちていくんだ」 「ティエリア?」 「あなたと一緒にいきたい」 「それはダメだ」 ロックオンが首を振った。 「お前は連れて行けない」 「どうして」 「お前は生きているから」 「だったら、生を放棄すればどうなる?」 「お前にできるのか?仲間を見捨てて。誰が仲間を守るんだ。誰が刹那とアレルヤを探すんだ」 「・・・・・・・あ」 できるはずがない。 ロックオンのあとを追いたいと思ったのは、そう、あの時が最初で。 最後にしなければならないのだと、ティエリアは気づいた。 死にたいなどということは、禁断だ。仲間を守るのは、CBを率いていくのは、アレルヤと刹那を探し、その帰りを待つのはティエリアしかいないのだから。 NEXT |