「あなたはずるい」 「そうだな。俺はずるい」 「一人で先へ先へといってしまう。もう、どんなに望んでも、僕には届かない場所にいってしまった」 ロックオンの制服に、ティエリアの涙がしみこんでいく。 「僕はあなたに生きていて欲しかった」 「ティエリア」 「あなたを愛している。愛している。好きだ。大好きだ。一緒にずっといたい」 「ティエリア」 鮮明だったロックオンの体から、エメラルド色の光があふれ出し、ちらちらと雪のように舞い降りてくる。 「俺も愛してるよ。大好きだよ。お前の記憶の中に、心の中に俺は生き続けている」 「あなたは僕を残していった。でも、僕はあなたを許す。だって、あなたを愛しているから。あなたがとった行動は愚かだが、否定はしない。あなたは、確かに生きようとしていた。帰ってこようとしていた。あなたは、確かに生き残るつもりでいた・・・・ねぇ」 「どうした?」 「さよならは、言わないで」 「分かったよ」 ロックオンの体が透き通っていく。ふわりふわりと、天に昇るようにエメラルド色に溶けていく。 「ロックオン。ただいま。僕の心はトレミーに戻ってきた。もう迷わない」 「おかえり、ティエリア」 ロックオンを抱きしめようと手を伸ばしても、もうロックオンに触れることさえできなかった。 「うん。もう迷わない。いっぱい泣くだろうけども。立ち上がる。挫折しても立ちあがる。何度だって!」 ロックオンの元にいきたいなんて、もう思わない。もう迷わない。僕は生きる。生きて、この世界を変革していく。ロックオンの心と共に。 ティエリアは、涙をボロボロ零しながら綺麗な笑顔を浮かべた。 「綺麗だよ、ティエリア。その笑顔、すごく自然だ。その笑顔を忘れずにな。また会おうな!」 「うん!」 ロックオンは、にっこりと微笑んで、消えた。 沈黙した世界に残されたのは、ロックオンがはめていたグローブだけが床にぱさりと落ちる。制服もペアリングも持っていってしまった。 でも、それでいいのだ。制服も彼のためだけに作ったものなのだから。もっていってくれて嬉しい。 NEXT |