トレミーを降りる。 「離してください、僕はバーチェで」 「だめだ」 「だったら行かない」 去っていこうとするティエリアを、ロックオンは抱きかかえた。 「うわ」 「あはは、顔真っ赤。かわいいな」 ティエリアは頬を紅くして、ロックオンにしがみつく。 落とされて怪我をしてはたまったものではない。 そのまま、ティエリアはロックオンに横抱きにされてデュナメスのコックピットに押し込まれ、ロックオンの膝の上に乗るはめになった。 「あなたは!」 文句を言おうとしたところで、唇を塞がれた。 ティエリアは、また真っ赤になって沈黙した。 二人が付き合いだして、まだあまり時間はたっていない。 ティエリアはロックオンのことが好きだと思う。一緒にいると胸がドキドキする。ロックオンは最初からティエリアが好きだと言っていたし、二人が恋人になるには、少し時間が必要だったが、二人とも今の関係になってよかったと思っている。 そっけない態度をとることが多いティエリアに、ロックオンは構わず自分のペースで振り回す。 ティエリアは振り回される。そして、気づけば笑顔を浮かべているのだ。 「あなたは、なぜこんなことを」 「お前に見せたいから」 「だから、僕もバーチェでいくと」 「デュナメスで一緒に乗せてくって決めてたんだ」 「自分勝手な」 「うん」 ハロが、ウィィンと機械的な音をたてる。 「ロックオン、ロックオン、ティエリアトイッショ、イッショ」 「さて、出るぜ!」 ハッチが開く。 そのままグンと、コックピットに重圧がかかる。 ティエリアは、ロックオンの首に手を回して、落とされないようにしがみつく。 デュナメスは大気圏に突入する。 そのまま地球に降りる。砂漠地方へとロックオンが操縦桿を操作する。ティエリアは、黙ってロックオンにしがみついて、瞼を閉じた。 「ティエリア」 揺り起こされて、ゆっくりとティエリアの石榴色の瞳が開く。 「大丈夫か?」 「大丈夫です」 「降りれる?」 「はい」 手を伸ばされて、その手に手を重ねる。でもロックオンは、ティエリアを抱きかかえてそのままコックピットから二人で地上に降りてしまった。 乾いた空気に、ティエリアは眉を顰める。 「ここは?」 「町からちょっと離れた場所。神の庭に、ガンダムでドーンって登場もいいけど、花つぶれしまうしな」 「神の庭・・・・」 ティエリアは胸が高鳴るのを感じていた。一度でいいから、見てみたいと思っていた。ネットでよくその花畑の写真を展示しているカメラマンのHPを見ていたティエリアを見て、ロックオンが気づいたのだ。 ティエリアは、本物を見たがっていると。 だから、見せてあげることにしたのだ。 地上に降りると、ティエリアとロックオンは、あらかじめ手配していた大型の車に乗り込む。 燃料切れが起きてもいいように、ガソリンも積まれている。水と食料と、あとは毛布やら、日常生活品。 「・・・・・・・・・これでいくのですか?」 「そう」 「ガンダムで行けばいいのに」 「ガンダムだと目立つからなぁ。地方軍に見つかったらやばいし」 「何故そこまで」 「お前さんが見たがってたから」 「僕は、そんなこと一言も」 「でも、本物みたいんだろう?」 頭を撫でられて、ティエリアはロックオンの座った操縦席に、頭を寄りかからせる。 サラサラと零れる紫紺の髪。 ティエリアは、一緒に持ってきたジャボテンダーさんを抱きしめて、また目を閉じた。 NEXT |