砂漠地方をセラヴィは飛ぶ。 いくつもの砂漠をこえて。いくつものオアシスをこえて。 広がる砂漠に一度降り立つ。 「西だ」 僅かな水の匂いをかぎつけた。甘い花の香りもする。確かにそこにある。あの神の庭が。 同じ場所ではないけれど。 砂漠に咲くその花畑は、ある程度まとまった雨が降ると一斉に花が開花する。数年に一度の時もある。咲かない時もある。 いつどこでその神の庭ができるのか、知る者は少ない。 予想はある程度できても、外れることも多い。 だから、小さな楽園と呼ばれる。 2週間たらずで消えてしまう、花畑。その奇跡をとりに、カメラマンは旅をし、シャッターをきる。 ティエリアは、新しい神の庭にいた。 昔ロックオンと訪れた花畑並みに大きい。砂漠地方でも奥のほうにあり、周囲に町もないため訪れた者はティエリアが最初だろう。そして、最後。 「最初に神の庭に訪れた者は、願いが叶う。僕の願いはただ一つ。ロックオン、あなたに会いたい」 花畑に、制服姿のままティエリアは佇む。 空を見上げる。 流れる涙をそのままに、ティエリアは透明な歌を何度も歌った。 「ばかだな僕は。あなたはいないのに」 花畑に倒れた。 空と風と花のロンド。 ティエリアは、いつの間にか眠りについてしまった。休憩もあまりせず、睡眠時間も削って仲間を守っていたため、疲労がピークに達していた。そのまま、ティエリアは眠り姫のように三日間起きなかった。 ヴィイイイイイイイイ。 鼓膜をつんざく、機械音にティエリアは目覚めた。 花畑の上を、地方軍らしき機体が旋廻している。しまったと思った。 セラヴィに戻ろうとしたが、その古びた機体はすぐにこちらに向かって降りてきた。 ティエリアは、拳銃を構える。 自分の命は、自分で守らなければ。 ハッチが開く。 降りてきた人物に向かって、ティエリアは発砲した。 弾丸は、空を射た。 舞い散る花びら。 空と風の軌跡。 NEXT |