世界でたった一つの楽園11







威嚇射撃を行ったあと、相手が両手をあげたので、ティエリアは銃を構えながら相手に近づいた。
「ヘルメットを外して、両膝をつけ。手は後ろだ」
相手は、言葉通りにヘルメットを外す。

光にすけて、金髪かと思った。
茶色の髪だった。くせのある、ウェーブがかかった。大分長い。後ろで一つに括っている。
相手は、いきなり隠しもっていた銃を発砲した。
それはティエリアの銃にあたり、銃が手から弾き飛ぶ。
「くそ!」
肉弾戦を想定して、手刀を相手に叩き込もうとして、ティエリアの手が止まった。

「いたずらな子猫ちゃん」
頭を撫でられる。
その感触は、とても懐かしい。
ああ、夢だこれは。

茶色の髪が、風に流れる。
眼帯をしていた。黒い眼帯。隻眼の瞳はエメラルド。
ティエリアの手袋のしたにはめたままの、ペアリングにはまった石のようなエメラルド。
綺麗な、そう、彼と同じ色の瞳。

「神の庭をずっと探して、毎日訪れて。約束しただろ?ずっと一緒にいるって。再会には、神の庭でって」

「嘘だ!」

ティエリアは首を振った。
涙が溢れる。
「こんな迷いを、夢を僕に与えるな。消えろ!」
ティエリアは、目の前の人物の鳩尾に拳を入れようとして、その手を掴まれた。
そのまま、ひきよせられる。
唇が重なる。
「あなたは、いない」
「いるよ、ここに」
「嘘ばかり。僕をおいていった」
「おいていってない。ここにいる」
「嘘ばっかり!」
ティエリアは泣き崩れた。
ドンドンと、目の前の人物の胸を叩く。
「どうして、僕にこんな夢を与える!あなたの死を乗り越えようとしているのに、どうして!!」

「再会は、神の庭でって言ったろ?」
「言った」
「夢でもいい。おかえりなさい!」
ティエリアは、ロックオンに抱きついて、花畑に転がった。

もう限界だった。思考が麻痺している。
「このまま、僕も連れて行って」

そう、昔歌った部族の唄のように。精霊に連れて行かれた人間のように、どうか僕も連れて行って。
あなたのもとに。


ただ、愛してるから。



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