世界でたった一つの楽園12







「それは無理な願いだ。なぁ、ティエリア。ただいま」
「おかえりなさい」
ティエリアは、その体温が消えてしまわないように、ロックオンに強く抱きついた。
「ごめんな。寂しい思いさせて。なんとか生き残ったけどボロボロで、トレミーがどこにあるのかも分からないし、連絡方法もないから、ずっと毎日神の庭を探して、訪れてた」
「どうして?」
「どうしてって、約束したじゃないか。もしも離れ離れになったら、再会は神の庭でって。昔なじみのやばいしごとちょっとやって金ためて、なんとかこっちの地域に流れ着いて、昔キャラバンで出会った部族の人と会って、今はそこで生活してる。といっても、毎日神の庭探してこうやって飛び回ってるけど。ほら、機体金ないからボーロボロ」
ロックオンが指差す機体は、確かにかなりボロボロだった。

「あれ、ティエリアの新しいガンダム?ヴァーチェじゃないんだな」
「セラヴィです」
「そうか。俺のもあるかなぁ」
「ケルヴィムが、あります」

「・・・・・・っく。ひっく、ひっく。この夢なんで覚めないのお?」
ティエリアは泣きながら、唇を噛み締めた。血が滲むくらいに。

ロックオンは、ティエリアを抱きかかえる。
「きゃあ!」
「ほーれほれ」
花畑の中心で、抱き上げてくるくると回る。
「目が、回る」
「俺も回る・・・・もう無理」
くるくる回りすぎて、二人とも目を回した。

抱き合いながら、青空を見上げる。
「なぁ、まだ俺のこと愛してる?好き?」
「今でも、あなただけを愛しています。大好きです」

そっか。

ロックオンは、笑ってゆっくりと立ち上がる。

風が吹く。

視界が花びらの嵐で霞む。

消えていく、光たち。

精霊が、連れ去っていく。

消えていく、夢。

「僕も連れて行って!」

ティエリアは、消えていく光と夢に向かって、せいいっぱい手を伸ばした。



NEXT