「それは無理な願いだ。なぁ、ティエリア。ただいま」 「おかえりなさい」 ティエリアは、その体温が消えてしまわないように、ロックオンに強く抱きついた。 「ごめんな。寂しい思いさせて。なんとか生き残ったけどボロボロで、トレミーがどこにあるのかも分からないし、連絡方法もないから、ずっと毎日神の庭を探して、訪れてた」 「どうして?」 「どうしてって、約束したじゃないか。もしも離れ離れになったら、再会は神の庭でって。昔なじみのやばいしごとちょっとやって金ためて、なんとかこっちの地域に流れ着いて、昔キャラバンで出会った部族の人と会って、今はそこで生活してる。といっても、毎日神の庭探してこうやって飛び回ってるけど。ほら、機体金ないからボーロボロ」 ロックオンが指差す機体は、確かにかなりボロボロだった。 「あれ、ティエリアの新しいガンダム?ヴァーチェじゃないんだな」 「セラヴィです」 「そうか。俺のもあるかなぁ」 「ケルヴィムが、あります」 「・・・・・・っく。ひっく、ひっく。この夢なんで覚めないのお?」 ティエリアは泣きながら、唇を噛み締めた。血が滲むくらいに。 ロックオンは、ティエリアを抱きかかえる。 「きゃあ!」 「ほーれほれ」 花畑の中心で、抱き上げてくるくると回る。 「目が、回る」 「俺も回る・・・・もう無理」 くるくる回りすぎて、二人とも目を回した。 抱き合いながら、青空を見上げる。 「なぁ、まだ俺のこと愛してる?好き?」 「今でも、あなただけを愛しています。大好きです」 そっか。 ロックオンは、笑ってゆっくりと立ち上がる。 風が吹く。 視界が花びらの嵐で霞む。 消えていく、光たち。 精霊が、連れ去っていく。 消えていく、夢。 「僕も連れて行って!」 ティエリアは、消えていく光と夢に向かって、せいいっぱい手を伸ばした。 NEXT |