消えた精霊たち。 残されたものは。 花の海。 制服姿のティエリア。 涙と。 ティエリアは、大切にしていた麦の穂のしおりを取り出して、泣き出した。 視界が霞む。 ああ、連れていってもらえるんだろうか、僕も。 熱を吸収してしまった制服と、熱に弱いティエリアは熱射病を起こしていた。 そのまま、花畑に倒れこむ。 ************************************ ボトボトボト。 「んー」 「大丈夫かー?」 ボトボトボトボト。 頭から大量に滴る水に、ティエリアは意識を取り戻した。 「冷たい」 「軽い熱射病だな。あいかわらず暑さに弱いな。でもこの麦の穂、大切にしてくれてたんだな。ありがとう」 唇が重なる。 ティエリアは目をゆっくりとあける。 景色がかわっていた。オアシスだ。 「・・・・・・・・・・・・・」 ティエリアは、ロックオンをひっぱると、そのまま泉に突き落とした。 ザッパーン。盛大な波しぶきがあがる。 「何するこらあああ!!」 ティエリアも、泉に身を投げる。 「ばかばかばかばかばかばか!!!!」 ぎゅううううううううううっと、涙をたくさんこぼしながら、ティエリアはロックオンに抱きついた。 冷たい水は現実のもの。伝わる暖かな体温も現実のもの。 「ごめんな」 ロックオンが、泉の中でティエリアを抱きしめた。 ティエリアは、ロックオンの形を確かめるようにペタペタと全身をさわる。 「こそばい」 「あなたがいる。あなたがいる・・・・・うわああああああああああああん」 子供のように、泣きじゃくるティエリア。 「うわ、そんなに泣くなって」 泉から、ロックオンがティエリアを抱きながらあがる。 「バカバカバカバカバカ」 ティエリアは、ロックオンを泉にまた突き落とした。 ザッパーン。また盛大な波しぶきがあがる。 「ちょ!」 水面に顔をあげたロックオンは、水中にもぐるはめになった。 ティエリアが、水中で押し倒してきたのだ。 そのまま、呼吸もできない状況で唇を重ねる。 水中で、ティエリアは瞳を金色にかえた。 「ぷはっ」 「はーっ」 二人で水面から顔を出す。 ティエリアは、涙をまたこぼした。 そして何度もロックオンに抱きつく。 ロックオンは、優しい微笑をこぼして抱きしめ返した。 NEXT |