世界でたった一つの楽園13







消えた精霊たち。
残されたものは。

花の海。

制服姿のティエリア。

涙と。

ティエリアは、大切にしていた麦の穂のしおりを取り出して、泣き出した。

視界が霞む。

ああ、連れていってもらえるんだろうか、僕も。

熱を吸収してしまった制服と、熱に弱いティエリアは熱射病を起こしていた。

そのまま、花畑に倒れこむ。

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ボトボトボト。
「んー」
「大丈夫かー?」
ボトボトボトボト。
頭から大量に滴る水に、ティエリアは意識を取り戻した。
「冷たい」
「軽い熱射病だな。あいかわらず暑さに弱いな。でもこの麦の穂、大切にしてくれてたんだな。ありがとう」
唇が重なる。
ティエリアは目をゆっくりとあける。
景色がかわっていた。オアシスだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
ティエリアは、ロックオンをひっぱると、そのまま泉に突き落とした。
ザッパーン。盛大な波しぶきがあがる。
「何するこらあああ!!」
ティエリアも、泉に身を投げる。
「ばかばかばかばかばかばか!!!!」
ぎゅううううううううううっと、涙をたくさんこぼしながら、ティエリアはロックオンに抱きついた。
冷たい水は現実のもの。伝わる暖かな体温も現実のもの。

「ごめんな」
ロックオンが、泉の中でティエリアを抱きしめた。
ティエリアは、ロックオンの形を確かめるようにペタペタと全身をさわる。
「こそばい」
「あなたがいる。あなたがいる・・・・・うわああああああああああああん」
子供のように、泣きじゃくるティエリア。
「うわ、そんなに泣くなって」
泉から、ロックオンがティエリアを抱きながらあがる。
「バカバカバカバカバカ」
ティエリアは、ロックオンを泉にまた突き落とした。
ザッパーン。また盛大な波しぶきがあがる。
「ちょ!」
水面に顔をあげたロックオンは、水中にもぐるはめになった。
ティエリアが、水中で押し倒してきたのだ。
そのまま、呼吸もできない状況で唇を重ねる。
水中で、ティエリアは瞳を金色にかえた。

「ぷはっ」
「はーっ」
二人で水面から顔を出す。
ティエリアは、涙をまたこぼした。
そして何度もロックオンに抱きつく。

ロックオンは、優しい微笑をこぼして抱きしめ返した。


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