「なんだ、ロックオンはエターナルなのか?」 「二人ともエターナルだ!ティエリアには悪いが、協会に属さないエターナルは殺すしかない!」 「ロックオン!!」 刹那が名を呼ぶが、ロックオンはちらとそちらを一瞥しただけだった。 「ソランの形をしただけの、偽者が。我の親友であったソランを侮辱している。死ぬが良かろう」 ごうっと、刹那のイフリートが刹那に向かって炎を放つ。 金の鷹に乗った刹那はなんとか交わすが、背後に血の匂いがした。 「死ね、鷹の姿をした者」 ロックオンが、刹那の肺を握りつぶした。呼吸ができず、血を吐いて刹那が金の鷹から落ちる。 それでも、ビームサーベルを空中で取り出し、ロックオンに切りかかった。 「威勢がいいな。そういうところは、鷹に似ている」 ロックオンは、ビームサーベルを右手で握りこむ。じゅっと、肉がこげる匂いがした。ビームサーベルを奪われて、刹那は血の海に落ちる。広がっていく血の染みが、どこまでも紅かった。 「こんな者・・・・皇帝である我には通用せぬ」 ビームサーベルは、助けようと風の上位精霊ジルフェを召還したリジェネの右腕を肩から切り落とした。 「あああああああああ!!!」 リジェネは、ジルフェを刹那にまとわせ、治癒を行わせ、それ以上の出血を防ぐ。 「・・・・・・・・ロック、オン・・・」 リジェネが、大量の血を噴出させながら、後ろに飛ぶ。 右腕は灰となった。 力が違いすぎる。 「ネイ!!お前さえいなければ!!お前がジブエリエルを殺した!!」 「おかしなことをいうものよ。ジブリエルは、寿命で死んだのだ」 アズリエルの叫びは、血の渦となってロックオンに襲いかかる。 まただ。 また、ティエリアの中に流れ込んでくる。 「ジブリエル・・・・すまぬ、そなたの寿命は我のせいだ」 「気にしてはいけません。私はそうなっても構わぬと、あなたと一緒になることを望んだのですから」 真の皇帝ネイの力は強すぎた。そんな者の傍にずっといるのは、寿命を縮めるのと同じこと。だから、誰もがネイの傍を離れていく。 ネイは、皇帝でありながらずっと一人で孤独だった。 同じ双子の弟ライルでさえも、ネイを恐れ、ネイを捨てた。ネイは生まれながらの皇帝であった。だが、ただ皇帝という地位にあるだけだった。誰もネイを見ようとしない。 家臣たちですら、ネイを見捨てた。ネイは、真の皇帝でありながら、家臣さえ傍に一人もいなかった。 そんなネイの傍にやってきたのが、ジブリエルという、表の皇帝の摂政として代々勤める女性であった。ネイは、ジブリエルの暖かさに触れ、生きているということを実感した。 やがて二人は惹かれあい、恋をして結婚をして、一人の子供を儲ける。 それが、鷹のソラン。 鷹のソランも、ジブリエルと一緒にネイによく懐き、家庭は幸せであった。 ジブリエルには、弟がいた。リジェリエルという名で、よくネイの元に遊びにきた。 だが、大いなる力はジブリエルもソランもリジェリエルも、皆の生命力を蝕んでいく。 先に、ソランが崩御した。まだ、成人さえしていなかった。 アズリエルは、ネイの家臣の一人であり、ソランの友人であった。そのソランが、アズリエルの口癖であるネイを共に打つという約束しているのは、ネイも知っていたが自由にさせていた。 家臣たちは、ネイに近づくことはない。顔さえ知らぬ者がほとんどだ。アズリエルは、幾度かネイの顔を拝見したことがあった。ソランの友人として、アズリエルは表の皇帝がジブリエルの暗殺を企てていることを知り、アズリエルは表の皇帝の暗殺未遂をして流刑となり、魔の島に流された。 ジブリエルとアズリエルは、元々は恋人同士だった。そこにネイが現れた。 アズリエルにしてみれば、ネイにジブリエルをとられた形になるだろう。だが、ジブリエルは自らの意思でネイの傍にいることを望んだのだ。 ジブリエル・・・ティエリエル、次代のティエリア。 ネイ・・・ニール・・・・この世界での今の名はロックオン。 ソラン・・・鷹のソラン・・・次代の刹那。 リジェリエル・・・・次代のリジェネ。 「我はティエリエル、そなただけでなくリジェリエルもソランも生み出そうぞ。我は血の一族の皇帝ぞ。我の血をもってすれば不可能はない。我は狂ってただのヴァンパイアになるだろう。それでも願う。ティエリエルとの再会を。ジブリエル・・・・ティエリエル・・・・ティエリア。愛している、ティエリア」 そこで、流れ込んでくるものが止まった。 時間が止まったかのような感覚だった。 そう、僕はティエリア。ティエリエル。かつてのジブリエル。 ロックオンはニール、夜の皇帝ネイ。僕のかつての夫であり最愛の人。 刹那はかつてのソラン、リジェネはかつてのリジェリエル。魂までは受け継ぐことはなかったが、姿かたちはそっくりそのまま受け継がれている。 皇帝ネイ、ニールの願いは叶ったのだ。 この世界にもう一度、ジブリエルと会う願いは、もうとっくの昔に叶ったのだ。 ニールはただの狂ったヴァンパイアとなり、千年の時をいきながら血を啜りロードとなり・・・・そして、今覚醒した。ネイとして。 真の皇帝、ネイとして。 ならば、自分がとる道は唯一つ。 もう一度、ニールに愛を。 NEXT |