「ニール!!ネイ!!目を覚まして!!」 ティエリアが叫ぶ。 ロックオンは、アズリエルと戦っていた。 アズリエルとて、皇族のエターナル。そう簡単にやられはしない。 「貴様さえいなければ!ジブリエルは、ジブリエルは!!」 「わが、我がいなければそなたの親友ソランは生まれなかった」 「うるさい!!」 アズリエルは、むきになって、血でできた刃を形作ると、同じく血でできた刃をもったロックオンと何度も切り結ぶ。 「にゃあああ、大変にゃ、大変にゃ」 フェンリルがあわてている。刹那とリジェネは倒れ、流れ出す血が止まらないのだ。 「フェンリル。二人を凍らせて」 「主?そんなことしたら・・・・にゃにゃ!二人は人口ヴァンパイアで主と同じイノベイター。氷付けにすれば血は止まるにゃ!」 フェンリルは、凍てつく氷のブレスを吐いて、リジェネと刹那を氷付けにしようとしたが、傷口を凍らせることしかできなかった。 「主、主が・・・・主があああにゃああああああああ」 フェンリルが吼える。 何度も空中で白い翼をはためかせながら切り結ぶ二人をじっと見上げる。 そして、ビームサーベルを取り出す。 「血と聖水の名において、ロックオン・ストラトス、私の命に従え」 血でかかれた契約の証が、ロックオンの額に浮かんで消えた。 「なんだ・・・・・契約?いつの間に・・・あの小娘か」 ロックオンは、ティエリアを見つめた。 「目を覚まして、ニール!」 ティエリアは、泣きながらロックオンに訴えかける。 「我は・・・我は・・・・・」 狂って千年の間ヴァンパイアをしていたのではない。 そう、千年前まで皇帝ネイとして君臨していた。それから、それからなんだろう。何かがあって、狂ってしまった。なんであっただろうか。 「我は・・・・ジブリエルさえいれば、それで良かった」 そう、思い出した。 ジブリエルことティエリエルを世界にもう一度生れさせるために。 全ての力を使い、魂まで継承させた。同じように、世界にソランとリジェリエルも生まれるようにと。 魂の継承は禁忌。皇帝ネイの力をもってしても、ソランとリジェリエルの魂の継承はできず、ジブリエルしか魂の継承はできなかった。 そして、禁忌の代償として狂い、ただ血を求めるヴァンパイアとなってブラッド帝国を這い出て、南の王国を、三つ滅ぼした。 ブラッド帝国と人間国家では、時間の過ぎ方が違う。だから、こっちの世界のヴァンパイアは300年だとか短命で命を落とす。 数百年前にブラッド帝国を出たのに、それから人間世界では千年も時間が経ってしまった。 ブラッド帝国で過ごした千年も孤独であったが、人間世界の千年もまた孤独であった。 「アズリエル・・・・」 アズリエルが、隙のできたロックオンを背後から切り裂いた。 ロックオンは笑う。 ジブリエルの元にいけるだろうかと。 世界に生まれるように促したし、魂の継承もさせた。 でも、確認まではしていない。 「ニール!!」 翼を切り捨てられ、落ちてくるロックオンをティエリアが翼をはためかせて抱きとめる。 「そなたは・・・・・?」 不思議だった。 触れ合った場所から暖かな光が満ちる。 「ティエリア!僕はティエリア!あなたに会うために生れてきた!あなたが愛したジブリエルの魂を継承せし、ティエリエル!あなたと約束した。次に生れてきた時はティエリアと名乗ると!」 「ティエ・・・リア?」 ロックオンの手が、ティエリアの頬に触れた。 NEXT |