血と聖水V「エルドシアの館」







目的地についた。
刹那は鷹をしまい、ロックオンはブラックパラディンを魔界に返す。
そこは、寂れた町。
人の気配はない。

「ターゲットの名前はエルドシア。女性だ」
「女ヴァンパイア・・・カーミラか」
女のヴァンパイアは、通称してカーミラと呼ばれる。
カーミラは個体の名前ではない。俗称である。女のヴァンパイアであれば、それはカーミラ。男に俗称はヴァンプ。

人気のない町を、三人で歩く。
大きな町だった。以前は賑わっていたであろう。人がいなくなってまだ時間は経っていない。

「声が聞こえる・・・・向こうだ」
刹那が走る。
ティエリアは銀の短剣を構えた。
ロックオンは、様子見というように白い翼を広げると地面を離れた。

「ららら〜〜」

花畑が広がっていた。一面むせ返るような甘い花の香りがする。
その花畑で、7歳くらいの幼い少女が花を摘んでいた。

「らら〜〜〜あら、お客様?」
幼い少女は愛くるしい笑顔で、刹那とティエリアを見つめる。
金色のウェーブがかかった髪に、紫の瞳。ヴァンパイアの匂いはしない。
「お嬢ちゃん、一人?この町のみんなは?」
「みんな、いなくなっちゃった。エルドシアが追い払ったの」
「生きた非常食、エサってわけか」
「刹那!」
「生きた非常食?」
少女は分からないとばかりに首を傾げる。
「君の家まで案内してくれるかな?」
ティエリアが屈んで少女と視線を合わせる。
「うん、いいよ。ママにも会って!まま、ずと眠ったまんまなの。エルドシアも歓迎してくれるよ」
少女は一人で駆け出す。

「どう思う?」
「さぁ。わなの可能性は高いが。動かなければ始まらない」
「そうだな」
刹那も銀の短剣を取り出して、いつでも放てるようにする。

そのまま、二人は少女の後を追った。空中から、ロックオンがその後を追う。

ついたのは、豪華な屋敷だった。貴族の館だろう。綺麗な調度品があふれる玄関で、少女は叫んだ。
「エルドシア!お客さん連れてきたよ」
「まぁ、お嬢様。そんなことなさってはいけませんよ」
カカカ!!!
ティエリアが放った銀の短剣は、エルドシアのいた場所に突き刺さった。
「お嬢様、母君のところへ!ハンターです!」
「いやぁ!ママ、助けて!!」
少女は奥へとかけていく。
少女を守るように、エルドシアが二人の前に出る。
「ようこそ、エルドシアの守る館へ」
「カーミラ、エルドシア!ハンター協会の命により、駆逐する!」
刹那が叫び、呪札を取り出す。それをエルドシアに投げる。
エルドシアは跳躍した。
刹那が銀の短剣を、すれ違いざまに投げた。

「お嬢様の、ために、死んで、くださいませ!」

「右だ!」
ティエリアを、駆けつけたロックオンが抱いて飛び退った。
「お嬢様の、ために、死んで、死んで」
「駆逐する!」
刹那が銀の銃を取り出した。
「待った」
ロックオンが刹那を制する。
「何故だ!どけ!」

「こいつは・・・・ヴァンパイアじゃない。ヴァンピールでも・・・・ただのオートマティックバトルドールだ」
オートマティックバトルドール。通称戦闘人形。ヴァンパイアが自分の血で作り出す、戦闘だけしか能力のない下等な僕たち。
「そんなバカなことがあるか!こいつからは、濃厚な血の匂い、ヴァンパイアの匂いがする」
「鷹の。お前もまだまだ子供だな」
「何を!」
「二人とも、仲間割れはやめて!」

 



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