血と聖水V「それが世界の理」







母親の目が赤く光った。
「ただのネクロマンシーの魔法じゃないな。ヴァンパイアとしてのネクロマンシーか。あの女、ヴァンパイア並みの身体能力を持ってるな」
ロックオンが言うと同時に、真紅の刃が三人を襲った。

それを避けて、刹那がビームサーベルを取り出す。
ティエリアは銀の二丁の拳銃を両手に。

「ママぁ!!」
子供を残して、母親はいくつものオートマティックバトルドールを操って、襲い掛かってくる。
刹那が、炎の精霊フェニックスを呼び出し、オートマティックバトルドールたちを燃やしつくす。
「いでよ、フェンリル」
「にゃああああああん、にゃああ、主呼んだかにゃ」
「あのヴァンパイアの子供を凍らせろ」
「はいにゃあ」
凍てつく氷のブレスを、フェンリルはエターナルの少女に向けてふきつける。
それを、母親が庇う。

「この子は私の命!この子には私しかいない!」
「ママ!」
凍りついた傷口がすぐに塞がる。ネクロマンシーの魔法の特徴。その魔法をつかっている者を倒すしかない。
刹那がビームサーベルで切りかかるも、その傷口のすぐに癒えた。
このままでは埒が明かない。

ティエリアも覚悟を決めた。
「ロックオン!」
「はいよ、任せな!」
ロックオンの背中に白い巨大な翼が現れる。
「え・・・・パパとおんなじ、エターナル?」
少女が、目を見開く。
ロックオンは、宙を飛びすさると、少女のエターナルを確保する。
「あなたは・・・・・あなたは・・・・・」
少女が泣いていた。

「ママ、もういいよ。ごめんなさい。私のためにもう人を殺さないで。この人たちも」
「何を言ってるの、マリアーヌ!」
「ママ。ママ、愛してる。ママ、世界中で一番愛してる」
少女は、ネクロマンシーの魔法を止めた。
ミイラに戻っていく母親。
それを見守って、少女は母親にかけよると、炎の精霊サラマンダーを召還すると、母親の遺体を火葬にした。

「おい、どういうことだ?」
刹那が、ビームサーベルを手に、ロックオンの隣に並ぶ。
「あの年で精霊召還か。しかも契約なし・・・禁断の子は、どのみち狂うからな。処分するなら今しかない」

遺体がなくても、ネクロマンシーの魔法を使えばまた母親は復活するだろう。
でも、少女は灰となった母親に縋りついて泣いていた。ネクロマンシーの魔法を使う様子はない。

「私が、ママに人間を殺させていたのね。ママとエルドシアに、私が人間を殺させていた。私のために。私を生き伸びさせるために。そう、私はヴァンパイアだったのね。パパは私のことを人間だって、ママも人間だって、エルドシアもそういうから信じてた。私、ヴァンパイアだったんだ。狩られて当然だよね・・・・」
少女は灰を両手に掴むと絶叫した。
「ママ、ママ、ママあああああああああああ!!!」
「マリアーヌ!」
駆け寄ろうとするティエリアを、ロックオンが止める。
「ダメだ」
「でも!何か救う方法はないのか!」
「百人以上も、直接ではないにしても人間を殺したヴァンパイアを救うのか?子供でも、立派なヴァンパイアだ」
「・・・・・・・納得が、いきません」
「納得できないことも世の中にはいっぱいあるんだよ、ティエリア」
ロックオンはティエリアを抱きしめる。

刹那はビームサーベルで、母親の灰を握り締めて泣いている少女を背後から突き刺した。

「痛いよ・・・・ママ・・・・パパ・・・・助けて」
少女は、血の涙を流していた。
 



NEXT