「フェンリルの散歩にいってきまーす」 「おいおい、どこに精霊の散歩に付き合う契約者がいるんだよ」 「うるさいにゃ!主との愛の時間をじゃまするな、このエロエロエロ男!」 昨日、ティエリアとロックオンのSEXを見てしまったフェンリルは、ロックオンに噛り付いて頭に穴をあける。 血がたらーって流れる。これ、もう毎日の習慣。 コオオオと、せいいっぱい氷のブレスを吐くが、ロックオンの体を凍りつかせるどころか涼しい風を送っている。 「にゃああ。この前のブレスでガス欠だにゃ。アイスくわないと、氷のブレス吐けないにゃ」 「じゃあ、アイスたべにいこっか〜」 「はいにゃ、主V大好きにゃーVV」 フェンリルはペロリとティエリアの唇をなめる。 キスしているつもりなのだ。 「あ、てめぇ!」 「あっかんべー、だにゃ」 勝ち誇った笑みを浮かべて、フェンリルはティエリアに抱かれて町に繰り出す。 「たいやき食べたいにゃ!」 「買ってあげるー」 「おいしいにゃ!」 「あっちの噴水のほういこうか」 「はいにゃ。あ、あの首輪かわいいにゃ!買ってにゃ!」 「首輪なんてつけちゃっていいの?君は精霊のフェンリルなんだよ?」 「いいんだにゃ!僕は異端児で方破りなんだにゃ!」 「確か、君は精霊王の子なんじゃ」 「父上は色ボケで子供は300匹以上いるにゃ!みんな僕をいじめてたにゃ・・・だから精霊界飛びだして、主となる者を探してたにゃ!どうせならすっごい美人がいいって思ってたところに主がいたにゃ!もうメロメロにゃ!」 ティエリアは、店でアイスを買うと、持ち帰り用も用意して、噴水の前でフェンリルと食べる。 「ラベンダー味にゃ」 「こっちはチョコ味」 人々は美しいティエリアに注目を集めるが、にゃあにゃあしゃべるフェンリルにはあまり興味がないようだった。 今時、魔力でしゃべる猫のペットだっているのだから、そんなに猫がしゃべるのは珍しいことでもない。 つか、やっぱりどうみても子猫。 町に突如雪が降り始める。 オオオーン。 狼の遠吠えが聞こえた。 空間から突如現れたのは、3メートルはある大人のフェンリル。 「なんだ、お前やっぱここにいたんだ。お、うほ美人!ねぇねぇ、そんなできそこないのごみくずと契約やめて俺と契約しない?」 「は?」 「兄上!これは僕の主だにゃ!なんぱはやめてにゃ!」 「うっせーよ」 そのフェンリルはティエリアのフェンリルの兄らしい。 ティエリアのフェンリル、ゼイクシオンは兄に蹴られて泥まみれになってしまった。 ゼイクシオンは何度も兄に立ち向かっては、蹴られてボロボロになった。 「やめてよ!」 ティエリアが叫ぶ。 庇うと、フェンリルは牙を向いた。上位精霊は、契約者以外を殺すことだってある。 「そんなゴミ庇うのか?お前も氷付けにしてやろうか」 美人だから云々より、ゼイクシオンを庇うことに血が上ったらしい。 「この子はゴミなんかじゃない!」 ティエリアは泥まみれのゼイクシオンを抱きしめて、涙をこぼした。 「ただ、ちょっと力がないだけで・・・・これから、成長していくんだ。僕と一緒に!!」 光が満ちた。 ティエリアとゼイクシオンの額に契約の紋章が現れる。 「真なる契約・・・だ、と」 巨大な狼が怯む。 泥まみれだったゼイクシオンは、体を振るわせた。 オオオーン。大きな遠吠えの狼の声。 3メートルをこえる、10メートルはあろうかという本当に巨大な狼になったのだ。 ティエリアはゼイクシオンの背中に乗っていた。 真なる契約。それは、互いが命をかけて死ぬまで契約を貫くというもの。どちらか一方が死ねば、片方はいずれその死に殉じる。 3メートルが、物質世界、つまりは人間界でフェンリルがとる実体の大きさ。精霊界ではゆうに10メートルをこえる狼の姿をしている。 「帰れ。王の血を継ぐに相応しくないものよ」 「王は!王はお前などに跡を譲るわけがない!」 「王は健在だ。王の跡は、誰もつがない。さらに次の世代になるだろう。散れ!」 ゼイクシオンは氷のブレスを吐いた。 それはロックオンのヘルブレスよりも威力が上。 ゼイクシオンの兄は、凍りついたまま精霊界に強制送還された。 NEXT |