「ライル・・・・いい、俺はこのまま死にたいんだ」 「ジルフェル」 「俺は、お前の存在を不要だとは思っていない」 「そうか・・・・でも、もういい。たくさんの同胞を手にかけた罰だ。精霊王としてお前の傍らに半身を置くために、俺は無理をしすぎた・・・・もう。愛している、ライル」 ゴホリと、またたくさんの血を吐いた。 「ライル、血を与えろ!」 ライルは首を振って、ジルフェルを抱き上げた。そして、唇を重ねる。 「俺も愛してるよ、ジルフェル。アニューの前であった魂よ」 その体重はとても軽かった。 水色の長い髪が地面を流れる。 「おかえり、アニュー。おやすみ、ジルフェル」 腕の中のジルフェルは息耐えた。そして、光がその遺体を包み込み、姿を変えたのだ。 魂の転生。 それは、何も死んだ後に起こるものではない。 ごく稀に、転生した魂が、同時に生きている時がある。同時の場合、前世は次代の魂がこの世界に現れるとそのうちに死ぬ。 死ななければ、転生した者が死ぬし前世の者もそのあとを追うように死ぬ。 複雑な仕組みになっていた。 「アニューの前世はな、ジルフェルだったんだ。魂の継承。すぐに分かった。俺はジルフェルを愛していた。転生したアニューが現れたとき、ああジルフェルは死ぬ運命なんだと分かった。俺の血族のままで死にたいと願っているのなら、叶えてやるのが俺にできるせめてもの。俺は兄さんの跡を継いで皇帝となったけれど、命の倫理には逆らえない。アニューが死ねば、ジルフェルも死ぬ。二人両方は選べない。だからアニューをとるしかおれに選択権はなかった」 腕の中のアニューの髪は、ジルフェルと同じ柔らかな水色だった。 「ライル?私、夢をみていたの。あなたの傍で、精霊王として生きていた夢を」 ゆっくりと開かれるその瞳は、ジルフェルの片方の瞳の色であった紫。 「疲れているだろう。今はおやすみ、アニュー」 「ええ、おやすみ。・・・・・・・・・・夢の中で私はいっていたわ。俺は、あなたの血族でよかった。あなたと会えてよかったと」 「俺もだよ、アニュー、ジルフェル」 ティエリアは、ロックオンに抱き寄せられていた。 イフリエルは、ジルフェルの魂がアニューに継承されているのを確認して、口を開いた。 「私も愛していたんだがな・・・・私の負けだ。ライル、ネイの弟よ。ジルフェルの魂を頼む」 「ああ」 イフリエルは、炎となってその場から消えてしまった。 「兄さん・・・・俺、いっぱい言わなきゃいけないことある。でも、俺はもう血の皇帝なんだ。でも、これだけは言わせてくれ。俺は兄さんを捨てたわけじゃない。兄さんを愛しているよ。今でも、それは変わらない」 「ライル・・・・・俺は」 ライルの姿が消えた。 「ライル!」 「俺が無理に精霊界にきたから。追い出される。またな、兄さん」 「ライル!!!」 ロックオンは、何度もライルが消えた空間に向かって名前を叫んでいた。 「俺は・・・・お前のこと、誤解してたようだ、ライル」 「魂の継承?同時に前世が生きているなんて、おこるものなんですか?」 ティエリアは、武器を全部しまいこんだ。 空間が歪む。 「主、精霊界から追い出されるにゃ!捕まって!」 オオーン。 ロックオンの魔力を受けて、3メートルの巨大な狼となったフェンリルはロックオンとティエリアを乗せて、精霊界から人間界に出た。 精霊界にきたときは、精霊王の庇護があったので平気だったが、その庇護がなくなったので追い出されたのだ。 精霊界は精霊のいるべき場所。 ヴァンパイアがいるべき場所ではないのだ。 NEXT |