私立ガンダム学園W







衣替えの季節ももう終わった。
しとしとと毎日雨が降る。梅雨の季節。
それが終われば本格的な夏だ。

ジーワジワーと蝉の鳴く声を聞きながら、アレルヤは背伸びした。
教室に一番のりだったのだ。
私立ガンダム学園は、私立なだけにあって教室もそれから体育館にいたるまで空調設備が整い、涼しい室温設定になっている。唯一違うのは、中庭に設けられた温室くらいだろうか。
電車通学のアレルヤは、人ゴミにもまれ、照りつける太陽の下を歩いて登校してきた。
一般家庭に生まれたアレルヤは、電気代節約の名の下、毎日暑い日を過ごしていた。学校にいるほうがよほどいい。
「おーい、おはよう!」
アレルヤは、窓から身を乗り出して、高級車から降りたばかりのニールに手を振った。
ニールは気づいて、手を降り返してくれた。
「よー、アレルヤおはよー!あっついなー!」
「暑いねー!!」

「学校に到着いたしました、お嬢さま、お坊ちゃま」
メイドが、鞄をリジェネに持たせる。
「ほら、ついたよティエリア。いい加減起きて」
「むにゃあああ。あと1時間・・・・ぐーぐー」
「ニールが先いっちゃったよ」
がばっと、ティエリアは高級車の中に設置されたティエリア専用ベッドから起き上がって、メイドに髪をブラシでといてもらうと、髪をくくってもらう。
それから、ばしゃばしゃと顔を洗うと、ジャボテンダーを背中にくくりつけてもらって、メイドから鞄をもらって外に出た。
校門に立っていたのは、生徒指導のビリー先生他数名の教師。
「おはよう、ビリー先生」
「おはようございます、ビリー先生」
「ああ、おはようティエリア君、リジェネ君。挨拶をするとは感心だが、できれば制服をちゃんと着て欲しいな」
ビリー先生は苦笑する。
ティエリアは白の半そでのブラウスに学校指定の白のベスト、下は白の半ズボンに通気性のいい白のニーソ、
それからミンクの毛皮をあしらったブーツ。
リジェネは私服のTシャツに、白の半ズボン、ハイソックスにティエリアとお揃いのブーツ。
はっきりいって、ここまで私服を堂々と着る生徒も珍しい。
二人は、鞄だけは一応学校指定のものを使っていた。

ティエリアとリジェネは特別も特別。某王国の王女と王子である。貴族の血もひいている。ティエリアとリジェネの母は某王国の第二王女で、父は名貴族で侯爵家の家柄であった。
とにかく、生まれがセレブな上に、両親が学校に湯水の如く寄付をするので、ティエリアとリジェネの双子は、教師たちからも贔屓されている。理事長がそのように手配をしているので、ビリー先生もできれば制服を着て欲しいなぁと思うくらいで、無理強いはしなかった。

「だって、この学校の制服ださいじゃん。毎日同じ格好なんてやだよ」
モデルをしているティエリアとリジェネには、同じ格好で毎日を過ごすという覚えがなかった。今はいているブーツはモデルをした時にデザイナーからもらったものだ。二人の服は有名デザイナーがオーダーメイドで作っている。
アイドルユニットグループにも所属し、雑誌撮影をメインに、時にはCDを出している。二人は綺麗な透明な声で歌う。ティエリアはソロアルバムをすでに何枚か出しており、どれもミリオンセラーになっている。
二人は、中性的な少年ばかりがそろう「アークエンジェロス」というグループのメインボーカリスト二人だ。ティエリアだけは完全な中性、女性よりではあるが性別が存在しないため、少年ではないがそこが余計に神秘的らしい。詳しくいえば、リジェネも男性よりの中性であり時折男性に分化はせども、普段は性別はないのだが、これは親とティエリア以外は知らない秘密事項であった。

ニール、ライル、刹那はティエリアとリジェネの両親に引き取られ、親のいない三人は屋敷の別宅に住んでいるが、事実上ティエリアとリジェネと同棲していることになるだろうか。まぁ、ティエリアとリジェネの親は三人のうちの誰かをティエリアの夫として迎えるつもりなので、養子縁組はしていない。三人は、施設と一人暮らしのバイト生活の厳しい状態から、勉強にうちこむために別宅に住まわせてもらっている、という状態だ。
無論、母親と父親として、ティエリアとリジェネの両親は刹那、ライル、ニールにも分け隔てのない子供への愛情を注いでいて、皆幸せだった。
ニールはティエリアと付き合っているが、もはや親公認である。そこにリジェネがいつもちょっかいを出すが、いつもティエリアの傍にいたリジェネにとっては、愛しい妹がニールに奪われるのが面白くないのも仕方ないことかもしれない。


NEXT