プカプカと浮かぶグラハム先生を残して、皆体育の授業を終えた。 次の授業は教室移動。 家庭科である。 教師は、マリナ先生。男子生徒にも女子生徒にもダントツで人気が高い女性教諭だ。同じくスタイルのいいスメラギ先生も人気が高いが、酒癖の悪さのせいで授業中も酔っているのでなんとも。 「はーい。今日は、クッキーを焼きましょう。ペアになって別れてくださいね」 「はーい」 ティエリアは、すでにジャボテンダー柄のエプロンに着替え、椅子にはジャボテンダーさんを座らせている。あの騒ぎの中でも、ジャボテンダーを回収することを忘れないティエリア。 ジャボテンダーはティエリアの親友だ。 先生の言うとおり、ペアになって別れていくと。 ニールとライルがペアになった。刹那とティエリアがペア。残るはリジェネとアレルヤがペアとこれまた見事に別れた。 「ラッキ。兄さんが一緒なら楽勝だな」 「こらライル、手を抜くなよ」 「はいはい」 「では、まずは小麦粉を〜〜」 先生のいう手順でつくっていく。 家庭科がライルはそれなりで、ニールは得意だ。 ちなみにアレルヤはもけっこう得意。リジェネはセレブなので自分でお菓子を作ったりしたいので不得意。 刹那とティエリアのペアは、壊滅的だった。 レシピ通りになってもポイズンクッキングになると有名なティエリアと、同じ材料から人が泡をふくようなものを作り上げる刹那。 この二人のコンビはもう、誰にも止められない。 「ここで・・・・砒素を入れるのか。ふむふむ」 「あ、青酸カリ忘れてない?」 「忘れてた」 「入れないと」 「うむ、そうだな」 「あと、放散団子に・・・洗剤と」 「はーい、ではみなさん、形のできあがったものをオーブンで焼きましょう」 「はーい」と生徒一同は元気よく返事をした。 オーブンで焼くこと1時間。 できあがったものは、プスプスと異様な匂いを発していた。 二人は気にすることもない。 ティエリアのはかわいくジャボテンダーの形。 「なんか、色がおいしそうじゃないね?ちょっと待ってて」 「どうするんだ?」 「油絵の具で色塗るの」 「ふむ。じゃあ、俺はスプレーで着色するか」 二人は、ポイズンクッキングを続ける。 ティエリアは緑の油絵の具でクッキーに色をつけた。刹那はスプレーでグラデーションに塗った。 「はい。では、みなさんできあがったものを、もってかえってくださいね」 「はーい」 「多めにつくったから、やるよ」 ニールが焼いたクッキーを、アレルヤ、刹那、ティエリア、リジェネにあげる。ライルはもうつまみ食いしおわった後だ。 「おいしい」 「僕の屋敷のコックなみじゃんか」 「まぁなぁ。俺、家庭科だけは施設育ちだったし、年下の子供の面倒みながら施設の人と一緒に作ったりで、まぁ得意なんだわ」 「リジェネ、僕の食べる?」 「うん」 ポイズンクッキング、砒素とか青酸カリのはいっていない、普通のクッキーをティエリアはリジェネに渡した。 「んー。ちょっとパサパサしすぎかな。もちょっと小麦粉少ないほうが良かったね」 「うん、そうだね」 ぽりぽりと、それを食べながら、ティエリアも苦笑する。 ちなみにポイズンクッキングは「食べると死ぬ」ってラベルの貼られたままかわいくラッピングされている。 刹那もは「グラハム先生へ、愛をこめて」とかいわいくラッピングしたそれにカードをそえていた。 ティエリアも、「グラハム先生へVV」ってカードをつける。 殺る気だ。 この二人、殺る気だ・・・・。 NEXT |