血と聖水Y「フェンリルの朝」







「おはようございます、ロックオン」
「あー、おはよう」
ぼりぼりと頭をかいて新聞を見ているロックオンの足に、フェンリルは噛み付く。
「いってぇぇぇぇ!!」

「主がおはようといっているのに、なんて態度にゃ!」
フェンリルの首には、新しい首輪がつけられていた。ティエリアの首飾りとお揃いで、ガーネットがぶら下がっていた。
「フェンリル、おいで〜」
「はいにゃ!」
フェンリルは嬉しそうに、ティエリアの腕の中にかけよっていく。
ティエリアはフェンリルを抱きながら、朝食を食べていく。
「主、口にご飯つぶついてるにゃ」
「くすぐったいよ」
ペロリと、フェンリルがごはんつぶをとってくれた。
「ああああ、俺の役目がああああ!!」
ロックオンは涙を流している。

キャットフードを食べ終えたフェンリルは、ティエリアの手からご飯をもらって食べている。
「おいしいにゃー」
「俺が作ったんだけど」
「主の手から食べさせてもらっているから、おいしのにゃ」

フェンリルは、ティエリアの腕の中から飛び降りると、とことこと歩いて冷蔵庫をあける。
二本足でたって宙に浮かび、前足でせっせと冷蔵庫をあける姿はかわいくて仕方ない。
「にゃにゃ!!!」
「どうしたの、フェンリル?」
「アイスクリームがないにゃ!ここに置いてあったのに、ないにゃ!!」
「ああ?あれお前のだったの?俺が食っちまったわ」
「にゃああああああああああ!!!!」
フェンリルは泣いてティエリアの元に戻った。
「こんな子供の食べ物を奪うなんて、ロックオン、最低です!」
「んなこといわれても、食っちまったもんは仕方ねーじゃねぇか」
「最低だにゃ!!」
フェンリルは、テーブルの上をとことこと歩いて、ピョーンと飛び跳ねてロックオンの頭によじのぼると、いつものようにロックオンの頭にかじりついた。
「がじがじがじがじだにゃ。食べ物の恨みは深いんだにゃ!」
「いててえええええ!」
血をダラダラたらしながら、ロックオンはフォークをフェンリルの喉もとにつきつける。
「にゃにゃ!?」
フォークはポンと音をたてて、ロックオンの魔法で猫じゃらしになった。
「にゃ!」
血をだらだら流したまま、ロックオンはその猫じゃらしでフェンリルを誘導し、足元で猫じゃらしをふさふさと揺らして、フェンリルがつい子猫の性格から猫じゃらしをおっかける。
「ほーれほれ」
「ううう、かじりたいのに、猫じゃらしの誘惑には勝てないにゃああ!!」
フェンリルは右に左にと、忙しそうにとんでいる。

「ほーれほれ」
「あ、ロックオン」
「ん?」
「今日は昼からハンター協会に呼ばれていますので、出かけますね」
「俺もついてく」
「あ、はい」
「僕はすることがあるので、お留守番だにゃ」
「フェンリル、何か用事があるのかい?」
「ちょっとあるんだにゃ!」
「分かったよ。用があったら召還するから、それでいいかな。あと、お金おいとくから、アイスクリームかってきていいよ」
「ありがとうにゃ!主、大好きだにゃ!!」
フェンリルは、首にお金をいれた風呂敷を巻いてもらった。


NEXT