「正直いって、こちらも困っている・・・・まさか、血の帝国の教皇庁から使いがくるなんて思ってなかったからな」 協会の人間は、奥にティエリアとロックオンを通した。 「内容は?」 「ティエリアと、そのマスターの確保」 「アルテイジアめ。ついに動きだしたか」 「アルテイジア?」 ティエリアが、聞いたこともない名前に首を傾げる。 「血の帝国の教皇庁のTOP、教皇さ。俺の姪だ」 「ロックオンの姪・・・教皇・・・・」 「今真の皇帝についているライルはアルテイジアのせいで、子供の頃に幽閉されて俺と離れ離れにされた。アルテイジアは、ネイ、つまりは俺ほどの権力はないが、それでも教皇庁は独立した機関だ。表の皇帝なみに権力がある。厄介だな。アルテイジアが動き出したとすれば・・・・ヤツは俺の血族になりたがっていた。夜の皇帝ネイは、血の帝国にあってはじめてその存在と権力が認められる。今の俺には権力は限られてるからな」 血の帝国に帰る気のないロックオンにとっては、権力などどうでもいい存在だった。 ただ、血の帝国が自分に逆らわなければそれでいい。ロックオンにとって、血の帝国は故郷ではあるが、帰りたい場所ではないのだ。 帰るべき場所は、隣にいるティエリアがいる場所。 二人で住んでいるホームなのだ。 「ブラドの調べで、アルテイジアが前のおれのクローン製作の首謀者だと判明した。どう対応しようか迷っている間に、先手を打たれたか」 ぱぁぁぁ。 ティエリアの額に、契約の紋章が浮いた。 そこに現れたのは、残してきたフェンリルだった。 血まみれで、今にも息絶えそうな姿にティエリアが泣き叫ぶ。 「フェンリル!!!」 「主・・・・ごふ!にゃあ・・・・」 「しゃべらないで!いま、回復を」 「命の精霊リーブよ、フェンリルの傷を癒せ」 ロックオンが、動揺しているティエリアのかわりにリーブを呼び出し、傷を再生させた。 それでも、失った体力を血が戻るわけでもなく、ぐったりとしているフェンリルを、ティエリアは抱きしめた。 「誰が、こんな酷いことを!!」 「・・・・・・・・・・教皇庁っていえば分かるって、いってた・・・にゃ・・・・にゃぁ・・・・にゃあん」 ティエリアの指をペロペロとなめるくらいの力しかないフェンリルに、ティエリアは激怒した。 「教皇庁!フェンリルをこんな目にあわせたやつ、殺してやる!!」 「あー、ゴホン」 協会の人間は、咳払いをした後、こういった。 「ティエリア・アーデ。今日をもって、ヴァンパイアハンターとして任を解くものとする」 「どうしてですか!!」 「血の帝国と争えるわけがないだろうが!お前はもう用済みだ!」 「酷い!僕は、僕らはあなたたちに忠誠を誓って今までヴァンパイアハンターとして生きてきたのに、今更、問題がややこしくなるからと追放するのですか!?」 ティエリアは涙を滲ませて、詰め寄る。 そのティエリアを抱き寄せて、ロックオンは目に手を当てる。 幾つもの涙が、ロックオンの手のしたから溢れて零れ落ちた。 「あー、おっさん。それはティエリアの意思、そしてマスターである俺の意思を無視している。ヴァンパイアマスター、水銀のニールが、血の帝国のネイがハンター協会潰すぜ?さっきの言葉、取り消せ」 「ひいいい」 協会のお偉いさんは、ばさりと真っ白なエターナルの証である翼を伸ばし、瞳を真紅に光らせ、牙をむいて、長い爪を喉元に食い込ませてくる、「水銀のニール」であり「ネイ」であるトリプルAAAどころの問題ではないヴァンパイアマスターを前に失禁した。 血の帝国を敵に回すのも怖いが、「ネイ」を敵に回せば、下手をすればそれよりも厄介だ。 なぜなら、血の帝国は今のところ「ネイ」を主と認めているのだから。 この目の前のロックオン、三ツ星のどこでもいそうなヴァンパイアハンターのマスターは、血の帝国を従えることもできるし、滅ぼすこともできる。 「や、約束する。ティエリア・アーデの解任はないものとする。命だけは・・・・」 「ち、腐ってやがるな。どこもかしこも」 ロックオンはティエリアを抱いてホームに戻った。 NEXT |