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ショックで寝込んだティエリアの横でティエリアを抱きしめながら、ロックオンはティエリアが安心できるようにキスを額に落としてから、優しく囁く。
「心配すんな。お前は、今まで通りヴァンパイアハンターでやっていけばいい」
「でも、解任だと」
「俺を敵に回したくないだろう、協会も。解任はないさ」
「良かった・・・・」
ティエリアの腕の中で、フェンリルは眠っている。
「あー。俺も情けねぇなぁ。血の帝国の全てが俺に従うわけじゃないからなぁ。外にでたネイなどネイと認めない連中もいやがる」
「ロックオン?」
「なぁ、ティエリア。お前、俺となら何処でもいくって前いってたよな」
「はい。たとえ地獄でも、ついていきます」
「いい子だ」
「あっ」
喉に牙をたてられ、僅かに血を吸われた。
「あなたになら、命も全て捧げれる。心も体も、ロックオン、あなたのものだ」
「当たり前だろう。だから血族にしたんだよ。お前は俺のものだ!誰にもわたさねぇ」
「ちょっと長旅になるけど・・・・一緒に、血の帝国にいこうか?」
「え。でも、いいのですか?行かないと決めていたのでは」
「教皇庁のやり方が気にくわねぇ。俺がいないことをいいことに好き勝手やってるようだ。血の帝国は、俺が作った国。血の帝国がどんな歴史を歩もうと知ったことじゃないが・・・・俺にたてつくヤツは、容赦しねぇぜ」
ティエリアを安心させるように、何度も優しく撫でてやった。
「刹那とリジェネも連れてく」
「いいのかな?」
「ああ、連れて行って認めさせる。俺の大切な家族だってな」
「今日のあなたは・・・・なんだが、いつもと雰囲気が違う。包容力があってすてきだ」
「ばーか。俺はいつでもステキでかっこいいんだぜ?」
ウィンクすると、ティエリアも笑った。
1週間後。
「にゃあにゃああ」
フェンリルはすっかり元どおりにもどって、アイスを食べていた。
上機嫌で、尻尾をぴょこぴょこふっている。
ティエリアも元に戻って、ロックオンが作ってくれたシチューをたべていた。
幸せな日常。もうすぐ、血の帝国にいかなければならない。
不安はあるけど、ロックオンが一緒なんだから大丈夫。リジェネと刹那も一緒だ。みんな一緒。きっと上手くいく。
窓の外に不穏な気配を感じて、ティエリアはホルダーから銀の銃を取り出して、一人で外に出た。
ロックオンはまだ帰ってきていない。
「誰だ!?」
真っ白な翼をもったヴァンパイアが3人、闇の中から現れた。
「エターナル!!」
「ネイ様はいないのか・・・ちょうどいい。教皇様の命令により、死んでいたたくぞ、ネイ様の血族よ」
「うわ!」
幾つも血の刃が襲いかかる。
ティエリアはフェンリルを召還し、氷のブレスを吐かせてから、ビームサーベルを取り出して、エターナルの一人と切り結ぶ。
そのまま、どかっと壁にティエリアは吹き飛んでいた。
「ぐ・・・・」
眩暈がする。
「確かに・・・・・教皇さまの言っていた通り美しい。その美しさでネイ様をたらしこんだか」
衣服を破かれる音に、ティエリアは身を捩った。
「僕に触るな!!」
「知っているか?ネイ様は教皇様と結婚式を挙げるそうだぞ。お前は捨てられたのだ」
「そんなばかなことがあるか!ロックオンは僕のものだ!!」
「威勢がいいな。おい、殺す前に・・・・」
三人のヴァンパイアは下品な笑いを浮かべると、ティエリアの衣服を引き裂いていく。
「汚されても、僕はロックオンのものだ!!」
涙をにじませながら、ビームサーベルを手に反抗するが、全く歯が立たない。
「主にさわるにゃああああ!!」
フェンリルは、エターナルの一人にサッカーボールのように何度も蹴られて、ぼろぼろになっても、ティエリアを助けようと立ち上がる。
「主、を、助けるにゃ!!!」
フェンリルは吼えた。
三メートルはある巨大な狼になる。
「てめぇら、死ぬ覚悟はできてるだろうな!?」
怒りの頂点にたったロックオンが、フェンリルの背後に立っていた。
「ちょっとパトロールに出ている間を狙って・・・・しかも、ティエリアを殺そうなんざ、てめぇら、普通に死ねると思うなよ!!」
「思うにゃよ!!」
三メートルの狼になっても、フェンリルの本質はかわっていないようだった。
三人のエターナルは、ロックオンの素手で首と胴をもがれて灰となった。
「大丈夫か、ティエリア?」
「・・・・・・っくひっく、ひっく、ロックオン!!」
「怖かっただろう。ごめんな」
ロックオンに抱きしめられて、ティエリアは破かれた衣服の裾をあわせて泣いた。
「怖かった。怖かった・・・汚されるのかと思った。怖かった」
「もう、大丈夫だ・・・・」
時が、止まった。
ロックオンの心臓を、背後から剣で貫いた見たこともないほど美しいエターナルの女は、こう言った。
「ネイは返してもらう。お前のものではない。ネイは、血の帝国の民のもの」
「いやああああああああああああああああ!!」
ティエリアの絶叫が、闇夜に響き渡った。
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