「ティエリア様。どうか、我ら血の一族をお許し下さい」 「許すも何も!」 「ティエリア様。今回のこと、アルテイジアの企みに気づけなかった血の一族の民にも責任があります。ですが、どうか罪は問われぬように。私は皇帝として、ブラッド帝国の民を守る指名がありますゆえ」 平伏したメザーリアを立たせて、ティエリアは握手を交わした。 「あなたは立派な皇帝だ。僕が保障する」 「ティエリア様。ありがとうございます」 そのまま、刹那、リジェネ、ティエリアとアレルヤは王宮で何日か過ごした後、教皇庁に皇帝がかけあい、教皇アルテイジアと会う日取りが決まった。 「ティエリア様。どうか、アルテイジアにお気をつけ下さい。あの女狐は、ネイ様すら恐れぬ愚か者。アルテイジアの暗殺を、今ここに命じます、アレルヤ・ハプティズム。ティエリア様と同行し、身を守りなさい」 「心得ておりまり、皇帝よ」 アレルヤは、皇帝に頭を垂れる。 刹那とリジェネそれにアレルヤが、ティエリアの同行者となった。あと忘れてはいけないフェンリルも。 「ティエリア様。フェンリル王の子を飼っておられるか。まさに姫王の血に相応しい」 「あの、姫王ってなんですか?」 「ネイ様が崩御した後に、神となられるお方はネイ様しかいない。ネイ様は再び世界に生まれる。姫王は、その母となるお方」 「ええ?僕、性別中性なんだけど」 「性別など関係ない。ネイ様は、選んだ者の血に宿り、闇から生まれられるゆえ」 「皇帝よ」 ティエリアは、金色の瞳でメザーリアを見つめる。 「は」 「私は、ネイ・フラウ・ブラッディ・ナハト・ブラッディの名の元においてアルテイジアを滅ぼす。許されよ」 背中に真っ白な六枚の翼が現れる。 「御意」 「あ、あれ?僕、なんっていったの?」 きょとんとしているティエリアに、女皇帝は優しく笑いかけ、衣装を女官たちを呼んで改めさせた。 「美しいな、あなた」 「あの・・・・これ」 女皇帝の衣装をまとったティエリアは、とても美しかった。 豪奢なマントをし、金銀宝石で飾りあげられる。髪も結われ、白い花が髪にさされた。髪飾りもつけられて、ティエリアが皇帝といっても通用しそうなくらいであった。 「メザーリアが、謁見するとなっております。この短剣で、アルテイジアの心臓を刺されよ」 女皇帝が、真紅に耀く宝石をまとった短剣をティエリアに渡した。 「これは?」 「身分の高い者を殺す時に使うものです」 「えと・・・僕には、他に武器があるんだけど」 「まずは、これで心臓を刺されよ。そうれば、アルテイジアの力が落ちる。これは、神殿に結納されていた由緒正しき宝剣。必ずや、あなた様のお力になるでしょう」 「え!そんな上等なものもらっていいんですか?」 「ネイ・フラウ・ブラッディ・ナハト・ブラッディ」 「えっと、僕のことだよね?」 「どうか、ネイ様をお救い下さい。そして、あなた様との永久の愛をこのメザーリア、祈っておりますゆえに」 最後にクラウンとヴェールをかぶされた。 ティエリアは、本当に皇帝そっくりだった。 皇帝の衣装を身にまとった姿であるが、皇帝にこれだけ似ているのは何故だろう。 にこりとメザーリアは微笑んで、背中に六枚の白い翼を出す。 「あ、その翼!」 「私も、ネイ様の血筋に組する者・・・初代ネイ様は、妻と子を残しましたゆえ。5代目ネイ様も妻と子を残しましたが、崩御されました。初代ネイ様のお子の血筋は、今も静かに帝国に引き継がれております。私は、初代ネイ様の子孫にあたります」 ティエリアは、真紅の短剣を握りしめて、皇帝と別れを告げた。 「ネイ・フラウ・ブラッディ・ナハト・ブラッディ。ご武運を」 NEXT |