羊水の中を、リジェネは漂っていた。 その眠りを妨げる声に、リジェネは耳を塞いでいた。 「起きて、リジェネ!リジェネ!!さぁ、僕と一緒に帰ろう!」 さし伸ばされた手を、いつもリジェネは握っていた。 ティエリアのツインとして育ち、誰よりもティエリアが好きだった。 一緒に最初は暮らしていた。そのうち、ティエリアにロックオンというマスターができて別々に暮らすようになったけれど、ティエリアとロックオンのホームに毎日のように暇な時は遊びにいったし、いつも泊まった。 ティエリアと一緒のベッドで眠るのが大好きだった。 リジェネは、羊水の中でまどろんでいた。 眠りをさまたげる声に苦しげに眉を寄せる。 「見つけた。眠り姫。さぁ、行こうぜ」 リジェネは目をあける。 目の前には、ロックオンが立っていた。 「ロックオン・・・・?」 「さぁ、リジェネ。目を覚ませ。行こうぜ。ティエリアが待ってる」 その言葉で、リジェネは昔のゆうにティエリアを守らなくてはと思いついた。羊水を掻き分けて、生まれてきた時のように、カプセルをあけるようにゆっくりと。 「なんで・・・・なんで、僕の支配が通用しない?」 ヴェルゴールになっていたリボンズは、混乱した。 精神が崩壊したはずのリジェネの精神が、確かな波長をもって全身を支配していく。 ロックオンは、すでにリジェネの体内から出ていた。 「お帰り、リジェネ」 ティエリアが微笑んでいる。 リジェネは、ゆっくりと立ち上がった。すでに、ヴェルゴールのリボンズは体から追い出された後。 「リボンズ・・・・許さないよ。よくも、よくも僕の体を汚してくれたね!」 「君は・・・・・いつでも、僕の支配を拒否するんだね」 ヴェルゴールから、普通のヴァンパイアマスターに戻ったリボンズは、哀しそうにリジェネを見つめていた。 「僕が、血族にしたいのはこの世界でただ一人、君だけなのに。こんなに愛してるのに」 「はん、僕は君なんて愛してないね!」 リジェネは、ビームサーベルを取り出し、蒼く耀かせると、リボンズの心臓を一突き。 ヴェルゴールとして遊んでいた吸血王として、人間世界で魔王としても名高いリボンズは、声高く笑うと、ビームサーベルをさらに心臓に食い込ませて、リジェネの手をとらえると、口付けた。 「・・・・ん、やめろ」 リジェネは全身で抗い、リボンズを突き飛ばす。 リボンズに汚されたとはいえ、リジェネはリボンズの血族になるつもりもないし、恋人になるつもりもなかった。 リボンズが、一方的にリジェネに恋をしているのだ。 リジェネはリボンズを嫌っている。 リボンズは、リジェネを手に入れたと思っていた。 心が無理なら、せめて体だけでもと、リジェネを犯した。 リジェネの精神は崩壊し、そして体だけが残された。その体を抱いても、リボンズは虚しいだけだった。空のリジェネの器を操って、ティエル王国にちょっかいを出していたが、それもこれで終わり。 リジェネの体から、追い出されたリボンズは寂しかった。 寄生型のヴァンパイア、ヴェルゴールの存在でリジェネを寄生し、サクリファイスとしていたときは、リジェネの全てを手に入れたような錯覚を与えてくれたが、やはり錯覚は錯覚だった。 「お前なんて、殺してやる!!」 リボンズの唇を噛み切ったリジェネは、金色の瞳でリボンズを睨みつける。 リボンズはひらりと、漆黒の・・・・ヴァンパイアマスターの頂点を極めた翼を広げて、夜に闇となって溶けていった。 「くそお!!」 リジェネは、闇に向かって銀の銃を発砲する。 それはどこがどうなっているのか、真上から降ってきた。 「リジェネ、銃は使うなああ!!」 「なんだこの弾丸!なんで、前に発砲して、真上から降ってくるんだ!?」 「にゃあああ!!にゃああ、にゃあああ」 フェンリルは踊るように弾丸の雨を避けているが、混乱していた。 「にゃあ!!」 あろうことか、主のティエリアの腕に噛み付いたのだ。 「あ・・・・主。にゃあああああああああ、やっちゃったにゃあああああああああああああ!!」 NEXT |