天使の鎖「悪魔襲来」







「逃げろ!悪魔だ!!」
天宮が騒がしくなる。
悪魔は時折次元に穴をあけて、直接天界に攻め込んでくる。
狙うは、勿論天王とそして東西南北の王の首。

貴族たちは、王たちを護衛することもなく、我先にと逃げていく。
一人の戦闘奴隷が、ロックオンの前で悪魔と切り結ぶ。
「お逃げ下さい、北の王!」
「俺のことはいいから、お前も逃げろ!!」
「私のことなど構わずに!!お逃げ下さい」
「俺は王だ!悪魔ごときに殺されはしない!!」
ロックオンは、手から代々北の王に受け継がれる天剣をとりだし、せめてきた悪魔たちを切り殺していった。
「何匹きたか分かるか!?」
「上級悪魔が、西の王の館に攻め入ったとの情報が!」
他の戦闘奴隷がその場で膝をつき、混乱した情報を整理する。
「天王は無事なんだな!?」
「天王は、我らが守護しております。すでに、放たれた悪魔たちは滅ぼしました。東の王と南の王の館には悪魔が入ったとの情報はありません。西の王が危険です!」
「東の王が護衛にいっただろうが・・・・俺も念のためにいく」

北の王、ロックオンは天剣を手に、西の王が在留する西の王の館に急ぐ。
天宮には、王たちに部屋は与えられているが、実際に王たちが住むのは与えられた館である。たくさんの貴族の女官がその世話につく。もちろん、奴隷もだ。
ティエリアは、貴族を嫌っているので、西の国からつれてきた解放奴隷の平民しか回りの世話をさせない。戦闘奴隷などに、館を警護などさせていない。
他の王たちは戦闘奴隷に厳重に館を警備させている。
貴族の騎士などよりはよほど腕になるのが戦闘奴隷。悪魔がせめてきて死んでもいいように、と昔から使い捨てのように配備されている。
ティエリアはそれを嫌い、与えられた戦闘奴隷を勝手に解放して、西の国の王家の領地に住まわせている。

「ティエリア!!」
西の館につくと、悪魔の死体がいくつもあった。
流石は戦闘奴隷として名を馳せた西の王、ティエリア。
館の中で、悲鳴が聞こえた。
「ティエリア!?」
ロックオンは天剣を手に、館の中を走っていく。
「何をしている、逃げなさい!」
「しかし、王!」
「僕のことなど気にしてはいけません。あなたの命が大事です!!」
平民が悪魔に襲われていたところを助けていた西の王ティエリア。他の王なら、見捨てる。ロックオンも、余裕がない限り見捨てるだろう。なぜなら、相手は黒い翼を持っているから。

他の貴族の女官を守る。貴族が殺されれば、王は何をしていたのだと貴族連盟から追及がくる。
黒い翼の奴隷よりも、貴族の女官の命のほうが遙かに大事。それは政治にも響くのだ。
王たちの身の回りの世話をする女官は、名貴族の姫君たち。王の目にとまり、正妃でなくとも妃もしくは側室になれば、その貴族は位があがる。娘が子を儲ければ、その子の親の一族として権力を大いに振るうことができる。もしも、その子が次の王となれば、その親族は本当に王族になれる。

「西の王ティエリア、死んでもらう」
上級悪魔が数名、ティエリアに切りかかる。
「エーテル解放!ゴッドファイア!」
ティエリアの周囲に神の力であるエーテルが満ち、白い炎が上級悪魔たちを包む。
それでも上級悪魔は流石、それだけでは滅びない。
「きゃああああ!!」
「逃げろ、娘!」
白い炎に苦しめられながらも、一匹の上級悪魔が平民の、ティエリアの民に切りかかる。
ティエリアは手から天剣を取り出す前に、娘を自分の体で庇った。
血が飛び散る。
「エーテル解放!汝、戒めの棘の籠の中で死にたもう。ブラド・ヘルティシュカ!」
ティエリアは、他の王たちよりもエーテル力が高い。悪魔をたくさん滅ぼすことのできるエーテル、神の力。
天王でさえ、ここまでのエーテル力は持っていない。
ティエリアは天剣を取り出したところで、はっとなった。
「ロックオン、何をしている、逃げろ!!」
「バカ、お前、そんな血まみれで何いってるんだ!!」
ロックオンはティエリアを庇い、天剣で襲い掛かってきた上級悪魔を滅ぼしていく。

「我が名は魔王ヘルディア。西の王と北の王、死んでいただく」
上級悪魔たちを率いていたのは、魔王の名をもつ者だった。
ロックオンは、エーテルを解放する。
「エーテル解放!神の涙を受けよ!ティアキルシュバッサー!」
同時に天剣で、魔王のコアを貫く。ティエリアも、天剣で魔王を切り裂く。
魔王は無念の雄たけびをあげると、息絶えた。魔界にいる魔王は、下級クラスから本当の魔王クラスまで様々だ。今回は、上級悪魔クラスであった。
「魔王が・・・・魔王が天界にだと!一体どうなっている・・・・」
ガクリと、ティエリアはそこで力つきた。
東の王刹那はいなかった。南の王と共に、次元の狭間から直接魔界に悪魔退治に出かけていたのだった。
「おい、ティエリア、ティエリア!!」
ロックオンは、ティエリアを抱えて、北の王の館へ走った。




NEXT