それから時は穏かに過ぎていった。 「エーテルイーター始動!20%・・・・40%・・・・60%80%100%!完全解放!!」 悪魔軍との戦いで、西の王ティエリアはエーテルイーターで悪魔たちにトドメをさしていく。 エーテルの刃となった12枚の黒い翼は空を覆い、悪魔軍は追い詰められる。 東の王刹那が、いつも西の王ティエリアの出陣のときは一緒についていった。 悪魔軍との戦いも大分少なくなった。 「エーテル解放!ゴッドファイア!!」 刹那がエーテルを解放し、ティエリアの12枚の翼の剣から逃れる悪魔たちを絶命させる。天剣を取り出し、二人で空を翔けながら戦う。 美しいルシフェルの王は、戦神として天界に君臨する。 天王の信頼もあつく、もう何度目かに分からぬ勲章を授与された。 刹那の正妃となって10年が経過していた。 二人の間に未だに子供はできぬけれど、二人は確かな絆で結ばれていた。 刹那の隣には常にティエリアがいて、ティエリアの隣には常に刹那がいた。 東の国では、刹那の弟が暫定の王としてついた。補佐に摂政もついた。準王として、刹那に忠誠を誓いながらも、決して王にはならない。あくまで、東の王は刹那なのだから。 刹那は、西の国から出るつもりはないようだった。 「それにしても、いつになったら東の王と西の王の子がおがめるようになるのかねぇ」 「本当に。いっそのこと、西と東の国が合併してしまえばいいんでないかえ?」 「それはいい考えだ。西の王に子ができなくても、東の王族が王についてくださる」 様々な思惑が飛び交う中、ティエリアは刹那の正妃として、また西の王として政治を統治し続ける。 西の国でも東の国でも、御子はまだかまだかとの声が日増しに高くなっていくばかりだった。 刹那は家臣にいくら進められても、第2妃や側室は娶らなかった。 「どうして・・・・僕には子供ができないのだろう」 バルコニーに出て、空を渡る鳥をみていたティエリアに、刹那がマントを着させた。 「子ができなければ、西と東の国を合併させるという声がある。俺もいい考えだと思う。天王が許可すれば、合併は叶うだろう。一度合併したのにちまた別れ、東の血筋を西の王族に残していくという手もある。なるようになるさ。子供が産めない正妃など正妃ではないという考えは俺は嫌いだ。ティエリアは立派な俺の正妃、俺だけの妻だ」 「ありがとう、刹那」 ティエリアは自然に微笑む。 その年の冬だった。 刹那が原因不明の病に臥せった。 天界全土で原因不明の病が流行りつつあった。 刹那の看病で疲れているティエリアの元に、北の王のロックオンが訪れた。 「大分やつれたな」 「悪魔軍が躍起になって天界にウィルスをばら撒いたというが・・・どう思う?」 「確かに、悪魔軍はせめてこないな。その噂、あながち嘘でもないだろう。都では科学者の天使が何人も悪魔に拉致されている」 「エーテルイーター発動!エーテル始動」 ティエリアは黒い12枚の翼で刹那を包み込むと、自分の生命力を分け与えた。 「よせ、このままではお前が先に死ぬぞ!」 ロックオンに止められても、ティエリアは生命力を分け与え続けた。 「構うものか。刹那のいない世界など、生きていても意味はない」 「愛してるんだ!!」 背後から抱き寄せられて、ティエリアの翼はロックオンを包み込んだ。 「知っていました。昔から、僕もあなたが好きだった」 「だったら・・・・」 「でも、もう遅い。僕は刹那の正妃。そしてあなたには正妃のほかにおおくの妻がいる。もう戻れないのです。昔のようには」 そう、刹那の恋人であるまえ、ティエリアはロックオンの恋人であったのだ。 先代北の王の怒りをかい、二人は強制的に別れさせられた。不吉な西の奴隷王女と一緒にしておくことは、ロックオンの父にはできなかったのだ。災厄を呼ぶという奴隷王女と一緒には。 刹那は、国を捨てると先代王に言った。ティエリアと別れさせるなら、国をすてて西の国にいくと。結局刹那の父は折れて、刹那はティエリアと恋人となった。 ティエリアと別れさせられて、女遊びを続けるロックオンを、ティエリアが見捨てたのだ。 本当に愛しているというのなら、離れていても想う心は同じはずなのに。 NEXT |