「んー?なんか騒がしいなぁ」 ロックオンは、薬草をつみにきたのだが、風がざわめいている。 ずっと世話になっていた魔女の老婆は、去年ついに死んでしまった。ずっと5年間以上孫として魔女と一緒に生きていたロックオンは、魔女の老婆が好きだった。 しわくちゃのかわいいおばあさんだった。 ついでに処女だった。血も吸った。 血族にしようか迷うくらいに気に入っていた。でも、老婆は魔女のまま人間として死ぬことを選んだ。 ロックオンは老婆に出会うまで、ヴァンパイアハンターが襲ってくると必ず殺していた。いたぶるように殺して殺戮を楽しんでいた。 998人の処女を今まで襲った。処女たちはヴァンピールになる前にロックオンが解放した。女性には優しく。それがロックオンのモットーだった。 今まで、カーミラ、女性のヴァンパイアに精霊に人間に・・・・いろんな種族の女を抱いてきた。だが、どれも長続きしなかった。 老婆で999人目。1000人の処女の血を吸えば、ヴァンパイアは位があがる。 ロックオンは、もう1000人目の処女の血を吸う気もなかった。魔女の老婆と一緒に暮らしていた時期が思いの他長かったせいか、人間臭さがうつってしまった。 もう、ハンターを見ても無意味に殺さなくなっていた。 もっとも、ロックオンを殺そうとするバカなハンターはかけだしくらいで、そうそういないが。もしくは七つ星のエリートヴァンパイアハンターか。 千年間、ずっとヴァンパイアハンターを返り討ちにしてきたロックオン。水銀のニールとして、かつて千年前に南の王国三つを滅ぼしたとして有名なヴァンパイアロードだった。 「んー?血の匂いがする・・・・なんだぁ、おれのテリトリー荒らすバカがいやがるのか?」 ロックオンは、背中に真っ白なエターナルの翼を広げて(いつもは真紅だが、気分によって色が変わる)森を飛び出した。 上空に浮かぶと、シルフの精霊がロックオンに纏いついてクスクスと笑い声をあげる。 「あー、今度な。今度遊んで〜」 そのシルフの精霊は、ロックオンの彼女の一人だった。 ロックオンは、同時に複数の女性と交際をもつ女癖の悪いヴァンパイアだった。もっとも、老婆に出会ってからほとんどの恋人と手を切った。 今は、彼女といっても肉体関係もなくって、ただ暇つぶしに長いときを生きるロックオンとおしゃべりしてくれる友達であった。 「血の匂い・・・あっちから」 ネイとして覚醒する前のロックオンであったので、自分が帝国生まれであることや、ネイとしての記憶は持っていなかった。 ただ、長い時をさすらうように生きる、気ままなヴァンパイアであった、当時は。 開けた草原に出ると、一人のヴァンパイアハンターが死に掛けていた。 その上からヴァンパイアが一匹覆いかぶさり、暴行を加えていた。 ヴァンパイアハンターは無残にも衣服を破かれ、今まさに醜いヴァンパイアの男の一物で貫かれようとしていた。 「・・・・・・・・・ティエルマリア。すまない。殺せ・・・・こんな、こんな屈辱があるか・・・殺せ・・・」 血を吐きながらも、ヴァンパイアハンターは抗う。 それが、男のヴァンパイアハンターの欲望を注いでいるのだと、気づいていないようだった。 「あのさー。俺のテリトリーで何やってんの、お前」 ロックオンは、摘んだ薬草をシルフに頼んで自宅に送ってもらい、男のヴァンパイアにびしっと指をつきつける。 「こんなかわいこちゃん殺そうなんて、お前頭どうかしてるぜ!」 「・・・・・・・・・・・・殺せ。殺さないのなら、自分で死ぬ」 「ちょお!!」 ロックオンが止める暇もなく、とても美しいヴァンパイアハンターは銀の短剣で、首の動脈をかききった。 強姦されるくらいなら死を選ぶという潔さに、ロックオンは老婆の言葉を思い出した。 (女のヴァンパイアハンターは少ないんだよ。男のヴァンパイアに犯されて壊されるからね。女のヴァンパイアハンターは、汚されるくらいなら死を選ぶ連中が多い) 「目の前で死ぬなって!しかもめっさかわいい!!」 ロックオンは命の精霊リーブを呼び出して、ヴァンパイアハンターの傷を癒す。 「邪魔をするなぁああ!!」 男のヴァンパイアハンターが、目を真紅に光らせてロックオンを睨んだ。 「てめぇ、おれのテリトリー荒らしておきながらそういうこという?死ねよ」 NEXT |