男のヴァンパイアは、血の刃をロックオンにむけて放つ。 ロックオンは、軽く笑って自分の血で槍を作り出すと、ヴァンパイアの心臓を一突きした。 それだけで、男のヴァンパイアは灰になっていく。 「ロード・・・ばかな、こんな場所に、ロードがああ・・・・・・」 ヴァンパイアはそんな言葉だけを残した。 「さて、どうしたもんかね?」 ロックオンは、地面に降りると血まみれのヴァンパイアハンターを見下ろす。 ヴァンパイアハンターは、かっと目を開けた。 「お?」 リーブの精霊で傷は全て癒してある。 失った血と体力までは元に戻らないが。 「あ・・・・・」 ティエリアは、目の前にいる、優男にしか見えないロードヴァンパイアに一言。 「これはこれは、どうも助けていただいて・・・・ありがとうございます」 乱れた衣服は破かれて使い物にならない。かばんの中から薄い寝る時に使うマントをとりだすと、それで体を隠して、ペコリとまたお辞儀した。 「・・・・・・・・何それ!すっげー新鮮!!」 「えと・・・・すみません。弱くてご迷惑おかけしました。ロードさんのテリトリーを荒らす気はなかったんです」 「あんた、ヴァンパイアハンターだろ?俺が怖くねぇの?」 「どうして?」 「どうしてって・・・・敵だろ?」 「でも、助けてくれました。悪い方ではないです。はい」 「何それ。ハンターなら、俺殺そうとしないの?」 「いいえ。協会が指名したヴァンパイア以外、人を襲っているか、襲い掛かってきたヴァンパイア以外は相手をしないというのが僕の基本なので」 「へー」 じろじろとティエリアを見るロックオンに、ティエリアは真っ赤になった。 「あの、すみません。服が・・・破かれているので。あまり、見ないでください」 「んー。ほら」 ばさりと、ロックオンは自分の上着をティエリアに渡した。 「え?」 「着ろよ。そんなマントじゃ、どうにもなんねーだろ?」 「いいんですか?」 「いいよ、別に」 「ありがとう」 ティエリアは笑顔になって、ロックオンの上着を着た。 「ねぇ」 「はい?」 「あんた、男?女?」 着替えるティエリアの胸が平らなのを見て、ロックオンは首を傾げた。 確かに、ティエリアからは女性の匂いがしたのだが。胸がないとなると、男か?ロックオンの気のせいだったのだろうか。 「あー、中性です」 「まじで?神子?」 神子とは、中性の者に与えれる聖職名をさす。 「あー。そんなだいそれたものじゃ・・・・」 ロックオンは、ティエリア匂いをくんくんとかいだ。 「何この匂い?血の匂いに甘いバラの香り混ぜた匂い・・・・あんた、ヴァンパイア?」 「えと。そうです」 「ヴァンパイアなのに、ヴァンパイアハンターしてるの?」 ロックオンは、大いに興味を惹かれたようだった。 「えっと。イノベイターっていう」 「ああ。ティエルマリアの子供たちか」 ロックオンも、何度かイノベイターのヴァンパイアハンターと戦ったことがある。ヴァンパイアの回復力を有していて、厄介な敵だった。相手もロックオンが自分の力では倒せないとみて、結局は去っていったが。 下手をすればイノベイターのハンターには滅ぼされる可能性もあるので、ロックオンは深追いはしなかった。 「へー。ふーん。ほー」 ティエリアの周りをじろじろ見て、じっとティエリアの顔を見つめる。 「ティエルマリアを・・・女王を知っているのですか?」 「あー。有名だぜ?霊子学に手を出した禁断の女王って」 「ティエルマリアは・・・・だから死にました」 ティエリアは涙を浮かべる。 ぐーきゅるきゅるきゅる。 ティエリアのおなかがなった。 「わあ!」 ティエリアは真っ赤になった。 「おなかすいてんの?」 「もう3日も何も食べていないので・・・・」 「へぇ。いいぜ。ホームに来いよ」 「え?」 ロックオンは、始めて老婆が死んでから、ホームに他人を招待した。 NEXT |