血と聖水外伝「ティエリアとロックオンの出会い」6







「おはようございます」
起きてきたティエリアは、とても元気そうだった。
ロックオンは、朝食を一緒にとって、それから思い切って口を開く。
「なぁ・・・・・俺、ここでずっと一人で住んでるんだ。よければ、もうしばらく滞在しないか?」
「いいのですか?」
ティエリアは、不思議に思っていた。
ロードヴァンパイアのロックオンが、どうしてここまで自分に優しいのか分からなかったのだ。

「では・・・・協会には使い魔を出しておきますので。しばらくの間、お世話になります」
ロックオンは、ティエリアを腕の中に引き寄せていた。
「あの?」
「・・・・・・・・・・・キスしていい?」
「え」
「キスしたい」
ティエリアは真っ赤になった。
ロックオンはとても男性として魅力的だった。
「だめ、です」
「じゃあおでこに」
ちゅっと、唇がティエリアの額に触れる。
ティエリアは、ロックオンに抱かれながら、安堵感を感じていた。
「どうしてだろう・・・・あなたに、始めて出会った気がしない。遠い昔、あなたと出会っていたような、そんな気がする」
「俺もだ。遠い昔に、お前を愛して・・・・愛し合っていた気がする」

ティエリアの石榴の瞳が金色に変わる。
一粒の涙が、ティエリアの白皙の頬を伝う。

「・・・・・・・・・・ネイ。愛しています」
ティエリアは、そのまま意識を失った。

次の日から、二人の穏かな日常が始まった。
ロックオンは森に薬草をつみに出かける。ロックオンは、それで魔法を帯びた薬品を作り出して、定期的に町の業者に売って、その金で生活を成り立たせていた。
ヴァンパイアであるが、できるだけ人を襲わないように、普通の人間と同じ食べ物をたべてそこからエナジーを作り出したり、森の自然からエナジーをもらってロックオンは生きていた。
それでもどうしようもないときは、血の帝国から輸入される人工血液製剤を買い付けて、それを飲んだ。

ボフン!!
真っ黒な煙がたった研究室で、ロックオンは煙にむせる。
「あー。やっちまった。また失敗した!!」
一緒に研究を手伝っていたティエリアも真っ黒な煤を顔につけている。
「ごめんな。綺麗な肌が台無しだ」
「構いませんよ」
にっこりと、ティエリアは失敗した作品を見る。
「マンドラゴラを入れすぎましたね。失敗はそのせいだ」
「あー。マンドラゴラのやつ、根っこきってもお前、もっと切れとかうるさかったから。入れすぎちまったみたい」
マンドラゴラは、魔の一種の薬草で、言葉をしゃべる不思議な植物だった。
主にいろんな薬品の原材料となるので、ロックオンが裏の畑で栽培している。薬草のいくつはか、その畑で栽培されていた。
ごしごしと、ロックオンの手が濡れたタオルでティエリアの顔をふく。
「あははは」
ティエリアは笑う。
ロックオンの顔の煤が、まるで髭をかいたようになっていたのだ。
「おかしな顔!!」
「こらー!!」
逃げ出すティエリアを、ロックオンが追いかける。
「わー」
家の中を追い掛け回され、ついにロックオンに掴まった。

「キス、していい?」
ティエリアを、目を閉じた。
ロックオンの体はからは、吸血鬼独特の血ににおいはしなくて、お日様の匂いがした。
「ん・・・・」
最初は、触れるだけの優しいキス。
少し、角度を変える。
ティエリアは唇を開けて、ロックオンの舌におずおずと答える。
「んあ・・・・」
深く深く唇が重なる。
そのまま、とさりと、ソファに押し倒された。

「だめ・・・・・」
中性は、愛した者以外に汚されると精神崩壊を起こす可能性がある、精神的に弱い生物だ。男性でも女性でもない・・・中性の無性は、だからこそ神子として崇められる。神の子、天使のように性別のない中性。
この世界に、両性具有も神子となれるが、それよりも希少な存在。
本当に、世界にごく僅かしかいない。
両性具有はわりとこの世界には多い。

「天使みたい」
「僕は天使じゃないよ」
二人は、またキスをしてから、そして寄り添いあって眠りについた。



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