血と聖水外伝「ティエリアとロックオンの出会い」11







「あなたは・・・・僕を愛してくれる?守ってくれる?」
「愛している。守る。俺という存在全てにかけて。ネイの名において誓う」
ロックオンは少しだけ自分がネイという血の神であったことを思い出していた。

あんなボロボロの心の世界から、ティエリアを解放したロックオン。ティエリアは、どこまでも気高く美しかった。
ロックオンは、ティエリアの存在が世界にあることに感謝した。

「ネイの名にかけて誓う。ロックオンの名にかけて。お前を愛し、守る。お前は、俺だけのものだ。ティエリア、お前を俺の永遠の愛の血族にする」
ロックオンはティエリアに口付けると、自分の心臓をその手で貫いた。
永遠の血族、ただの血族ではない対等、愛を誓う血族にするためには、普通の血ではいけない。
マスターとなる者の心臓の血が必要だ。
不用意に心臓を傷つけるとヴァンパイアは死ぬ。だから、永遠の愛血族をもつのはロードかヴァンパイアマスターに限られている。

手を引き抜いたロックオン。
大量の血が、ティエリアに向かって流れていく。
「甘い・・・・」
ボタボタと滴るロックオンの心臓の血を、もっとと求めるティエリアに、限界まで分け与える。

「もっと・・・・ちょうだい・・・血・・・もっと・・・・」
心臓の傷を再生させ、ねだるティエリアに、ロックオンは首を差し出す。
ティエリアは、ロックオンの首に伸びた牙を食い込ませ、吸血する。
「う、ああああああ」
ロックオンも、吸血には弱い。この恍惚感と快感はSEXよりも上だ。

「ロックオン・ストラトスの名において、ティエリア・アーデ、汝を我が永遠の愛の血族に迎えん」
ティエリアの額に、契約の紋章が浮かぶ。
ロックオンの額にも、契約の紋章が浮かぶ。

「ロックオン・・・・」
ティエリアは、はにかむような笑顔で微笑む。穏かに。
「お前を守る。世界の全てから。お前は、血族となったことで中性、神子のまま世界に存在できる。俺と交わっても支障はない。ヴァンパイアハンターを続けるといい。おれは、お前のマスターとして、お前を補佐する。一緒にヴァンパイアハンターをしようか。パートナーに、恋人になろう」
「僕の、ハンターの補佐をしてくれるのですか?パートナーになってくれるのですか?」
「ああ。お前を愛する。いつでも傍にいる。ホームを持とうか。こんな森の中じゃない・・・・ヴァンパイアハンターとしても困らない、町に近い場所に家を建てよう」
「ロックオン・・・・」

もう、ロックオンの中にネイとしての記憶は薄れていた。
まだ、ネイとしての覚醒は序章。
ティエリアを、この世界に転生させた後、ロックオンは狂った。ただのヴァンパイアとなって血の帝国からさまよいだして人を襲い、やがて自我をもち、ロードヴァンパイアになりそしてヴァンパイアマスターとなった。
千年も待ち望んだ、愛しい人は、今ロックオンの隣にいる。

ネイの願いは叶った。
ネイとしての意識はロックオンの中で穏かにまた眠りにつく。
そして、ティエリアもロックオンがネイであるということも、自分がジブリエルであるということも忘れて、ただのティエリアとしてロックオンの隣にたたずむ。

二人は、血の契約を交わした。
お互いの指に血でできたリングがはめられる。
それが、お互いが血族であるという証であり、愛の証であり・・・そして、支配する者と支配される者の証。
互いに支配し、支配される。それがヴァンパイアの愛。
一方的に支配するのが普通の血族。互いに支配しあうのが、永遠の愛の血族。
対等なる存在。

二人は、魔女のホームを出て、ハンター協会に近い町の離れにあった一件家を買った。
新しく建てられた二人のホーム。
二人が、生活する場所。
共に生きると誓い合った二人は、こうしてホームで時を過ごすようになった。
ティエリアはヴァンパイアハンターとして生き、ロックオンはそのパートナーとして、マスターとしてティエリアを支え、愛し、守り、そしてハンターの手助けをする。
ティエリアは、ロックオンを血族にもったことにより、名のある精霊と契約ができるようになった。
ロックオンのように精霊王や精霊神と契約はできないが、名のある精霊と新しく契約していく。

ロックオンと出会って、11年と半年。
ティエリアは、リジェネや刹那、そしてフェンリルたちと一緒に成長していく。
ロックオンが常にその傍に寄り添っていた。ティエリアのパートナーとして、ロックオンはティエリアの成長を見守り、新しく家族となったフェンリルと一緒にホームで時間を刻み続ける。
ロックオンは、この世界に生を受けてもう2千年が経過していた。
精霊神ライフエルに神の能力を捧げたことで、転生しなくともまた長い時を生きれるようになった。
五代目ネイとして、ロックオンとして、ティエリアの傍に常にロックオンはいた。
 



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