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この世界は冒険であふれている。
ファンタジーワールド。冒険者たちは、PTを組んでそして冒険者ギルドに登録して、クエストをクリアしていく。モンスター狩りやダンジョン探検が主だが、中には王国の王女の護衛やら、行方不明になった少年の探索など、クエストは多岐に渡る。
クエストの難易度によって、報酬のゴールドも高くなっていく。
そして、冒険者たちは職業につき、その職業をマスターすれば更に上の職業についてと、そうこの世界はRPGファンタジーワールド。
ずっとオーラというLV99の証である光を身にまとっていたティエリアは、新たにできたシステム「転生」をした。転生とは99のキャラクターがもう一度LV1からはじめること。それに必要な経験値は今までの3倍。職業のマスターにかかる時間は、以前と変わらない。
職業のマスターは上位職業であっても職業についていればいつの間にかマスターできたりするが、時間がかかる。常に冒険に出て、敵を倒してJOBEXPを獲得している冒険者は論外だが。それに、今までマスターしたはずの職業にも新しいスキルが加わったりと、世界は絶えず動いている。冒険者たちも大変だ。もう一度、マスターしたはずの職業のつかなければ、次の上位職業につけなかったりという時もある。
世界で一番大きな大陸フロスト大陸の西に位置するエィウェルド帝国の冒険者たちが集うギルド認定の酒場で、彼らはテーブルについて昼食を食べていた。
LVと職業をまずはお互いに紹介しあう。
「僕はティエリア。LV32で転生している。職業はスペルマスターと新しくできた職業ファイアマスター。炎を自在に操れる、魔法職とはまた違う、どちからというと自然職・・・エルフなんかが使う、種族をいかした職業に近い。精霊の力を用いずに火を使える。面白そうなのでついてみた」
ティエリアは冒険者の間でも有名な、廃な人だ。いろんな職業をマスターしている上に、ついにはLV99になってしまった。それから転生システムができたので、これ以上LVがあがらないティエリアは転生した。LV99と転生者、それにある特定の関連職業を全てマスターした者は、通常では1つの職業にしかつけないのだが、2つの職業につける仕組みになっていた。ティエリアの横でミルクを飲んでいる青年も、2つの職業についている。
「俺は刹那。LVは91。ダークナイトとソードマスターをしている」
刹那は接近戦のスペシャリストで、通称「蒼の刹那と」呼ばれていた。いつも蒼と白の服装とマントを羽織っているからだ。蒼と白でできた服装はガンダムOOをイメージしている。
「僕はアレルヤ。LVは70で、ハイプリーストを終えたんだけど、新しく殴りプリーストって職業ができたので、今は殴りプリーストをしてる。楽しいよ?気で敵を倒すモンクやチャンピオンとまた違って。装備できる武器がね、ナックル系とか杖が普通なんだけど、聖書装備できるんだよねぇ。聖書で敵ボコボコに殴るの。爽快だよ」
「俺はニール。LVは64。前はドラゴンスナイパーって職についてたけど、ドラゴン特化だから、他のモンスターへの攻撃力がおちるから、セイントスナイパーに転職した。
一同を見回して、ティエリアの横でティエリアと手を組んでいた少年が、笑う。
「なんかさー。もともとパーティーなんだし、いちいち自己紹介する必要なんてなくない?」
「うっさいわ!自己紹介が冒険者の基本だ!」
ニールがラガービールを飲みながら、おつまみを食べる。ここ最近ずっとティエリアの傍にはリジェネがいて、ニールとティエリアは恋人同士なのに、邪魔されまくりだった。
「まぁ、僕も自己紹介。魔王リボンズいじめすぎて、魔王を泣かせた総帥のリジェネ。LV99だったのを、転生して今はLV28だよ。職業は総帥とあと魔王軍総指揮官についてる。じゃなくって・・・ええと、そうだ思い出した。
ハイウィザードとエレメンタルマスターだったっけ」
ティエリアとリジェネと刹那は人間の上位種にあたる「イノベイター」である。
刹那は正確にはイノベイターの亜種にあたる。
「でさ、まぁ自己紹介が終わったところで・・・・する必要もないんだけどさぁ。前作読んでない人でも読めるようにっていう僕の気配り。ああ、そのワニの蒸し焼き頼んだの僕だよ、ウィエイトレスさん」
ウェイトレスが、3人で巨大なワニの蒸し焼きを担ぎあげてきょろきょろしていた。ドン!とテーブルの真ん中にワニの蒸し焼きが置かれる。
「まぁ、おごりだから食べてよ」
ワニといっても、食用なので鱗もはがれているし、いろんなソースがついているのでおいしい。ワニは王侯貴族が好んで食べる。どんな世界だよっていわれても、そういう世界なんだから仕方ない。
ちなみに、ペットワニは二本足で歩いて、がおおって鳴く。けっこうかわいい。ドラゴンの子供に似ている。
「で、今度は何処にいく?リジェネもいるし・・・やっぱり、遺跡探検!」
ティエリアは生粋の遺跡探検マニアだ。ソロで遺跡やダンジョンを巡ったりもする。そこで見つけた新しい魔法書を覚えるのが趣味だった。
ちなみに、ティエリアが使う召還魔法は禁術とされているが、実際にはそういわれているだけであって、サモナー(召還士)という職業も存在するので、厳密にいえば禁術ではない。上位存在を召還する部分が禁術と言われるのだ。たとえば、精霊王など。人間では手の届かない、上位存在。
昼ごはんも食べ終わって、一行は冒険ギルドに向かうべく準備を整える。
「何か忘れてるよなぁ」
ニールは首をひねる。
なんだろう。何か大切なものを忘れている気がする。
隣のテーブルで、泣きながら他のPTメンバーになだめられていた青年が、一行の前に現れた。
「同じPTメンバー忘れるなんてひどすきじゃあああああああああ!!」
ライルはテーブルをひっくり返した。
「あ、ライル。そうかそうか。お前さんのこと忘れてた」
実の兄のニールはあっはっはと笑っている。
「ひど!みんなひど!!」
「いや、僕も忘れてた」
「俺もだ」
「僕も」
「僕もだ」
PT全員から、忘れていたと断言されて、ライルはしくしくと泣きつつ、ヅラを取り出してかぶった。
「おお、バカ殿ライル!ヅラないから忘れてた」
「俺はライル。LV64で職業は・・・・」
ライルの職業は前はニートだったり引き篭もりニート、それから絶望先生になって今は・・・・。
「バカ殿だ・・・」
シクシクと泣くライル。
バカ殿のヅラかぶってる。
ちなみに、ライルはひっくり返したテーブルの損害賠償を一人でさせられた。
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