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装備はすでに皆揃っているので、冒険者ギルドに出かける。
このエィウェルド帝国の冒険者ギルドは複数ある。国が広いからだ。とりあえず首都の冒険者ギルドに一行は出かけた。
壁に張り出された、クエストとその内容とその報酬金を皆で見る。
「オーク退治・・・どこの国でもオークやらゴブリンやらに悩んでいるようだな。他にはゴーレム退治に・・・何々、帝国の第三皇女の輿入れの護衛・・・つまらなさそうだな」
刹那がポスターを見ながら、文句を垂れていた。
「おやじ、もっといいクエストないか?」
ニールが、煙草をふかしているギルドの長に話しかける。
何も、ポスターで貼られているものが全てではない。上級者向けのものは、ポスターにはされない。低LVの者が調子にのって挑んで全滅というのを防ぐためでもある。
ギルドは広く、人がいてわいわいと賑わっていたが、皆ポスターのモンスター退治などを要請していた。
「ほう。長から直接ということは、それなりに場数を踏んできたPTか」
「まぁな」
「ドラゴン退治はあるが?」
「ドラゴン退治はしばらくしたくない」
ティエリアが首を振る。
今までに、3回ドラゴン退治をした。1回目のドラゴンはティエリアの召還獣となったが、あとの2匹は完全に狂っていて殺すしかなかった。
人が、その鱗や爪ほしさにドラゴンを密猟する。ドラゴンは、住んでいる森を追われて人間界にくる。ドラゴンの住む世界と人間界は繋がっている。人間界でドラゴンは瘴気にあてられ狂ってしまう。正気でいられるドラゴンは、すぐに自分たちの世界に帰るが、そうもできないドラゴンは狂って暴れ、冒険者たちに退治され、鱗や爪や牙、角などがとられ、最後は見るも無残な姿になってしまう。本当に、ドラゴン世界から人間界にやってきて、暴れるドラゴンなど少数である。
狂ったドラゴンは時に人の町や国を襲う。そんな場合は冒険者ギルドではなく、国や町が退治依頼を要請する。冒険者ギルドにも要請がいくが、国をあげての退治となると、高LVパーティが集い、ドラゴンは時間をあまりかけず倒されてしまう。
ドラゴンは、人に密猟されてもなお、孤高な意思を保ち、人と争う姿勢を見せない。
もともと人間界に住んでいたドラゴンでさえ、最近は退治の的になっているくらいだ。
その裏には、やはり密猟が関係している。
ドラゴンというのは、生きた宝石だ。その瞳は結晶となり、魔力を含んだ宝石にもなる。鱗や爪、牙はいろんな防具や武器の材料になるし、その血は魔法力回復の元となる。

「そうさな・・・遙か北の古城に、ヴァンパイアが住んでいる。何人か襲われ死んでいる」
「ヴァンパイア!」
リジェネが身を乗り出す。ヴァンパイアという種族はドラゴン並みに厄介で、そして何よりモンスターとしてはボスなみの扱いであった。
この世界には、7つのエルフなどの亜人種とは違った種族が存在する。
1、イノベイター(人亜種族)
2、フェザリア(羽耳族)
3、ダークフォーリング(黒翼族)
4、セラフィス(白翼族)
5、エターナルヴァンパイア(夜の血族)
6、ビーストレス(獣人族)
7、エレメンス(精霊族)
上記の7つの種族である。イノベイターであるティエリアとリジェネ、それに刹那はこのうちの1つの種族にあたる。7つの種族は人とは違った文化などをもち、人と交流もあるが、主に住んでいる場所は浮遊大陸エアリアルで、そこに彼らの王国や帝国が存在する。
中でもイノベイターは人亜種族であるせいか、他の種族よりも人の世界に紛れて生きることを好む。その特徴は瞳が金色で、時に真紅にかわるといったもので、他に人と変わった点は見た目には存在せず、冒険者の中に紛れ込んでいる時もある。ティエリア、リジェネ、刹那がその例だ。

「そのヴァンパイアはエターナルヴァンパイアじゃないんだな?もしもエターナルだと、厄介だぞ」
エターナルヴァンパイア、通称夜の血族。ヴァンパイアの名がついている通り、吸血行為ができる。だが、人間の血は彼らにとって毒であり、血液製剤を彼らは主食としている。
その血液製剤は、他の6種族の血からできている。
「エターナルな。以前、エターナルが間違って討伐された時は外交問題に発展したな」
7種族は結束が高い。もしも人間と全面戦争に突入すれば、数では圧倒的に人間が世界の人口をしめているが、その4分の1は消し飛ぶかもしれないと推論されている。
「ああ、その点は大丈夫だろう。人間を襲うエターナルなんぞいない。何せ、エターナルにとって人間の血は毒でしかないからなぁ」
ギルドの長は、よく見れば耳の形が羽耳になっている。フェザリアという種族だ。
人間世界に、7つの種族は文化交流をするように混じっている。町で7種族とすれ違うのも、大きな国でなどでは当たり前なことに昨今ではなりかけているが、種族によっては人世界に出ない種族がある。その代表がエターナルだ。
「まぁ・・・俺はフェザリアだが。そっちのPTの三人はどうやらイノベイターのようだし。エターナルであれば、すぐその三人が気づくだろう。7種族の結束は固いからなぁ」
ギルドの長は、虹色に光る羽耳をピコピコと動かして、笑った。

「まぁ、長の言うとおりだろう。エターナルなら、背にある翼が黒い。普通のヴァンパイアは真紅だ。それに、水色の髪に真紅の瞳をしている。見れば分かる」
ティエリアが、エターナルの特徴を、イノベイターではない人間であるニールとライル、アレルヤに説明する。


 



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