一行は、回復剤などを大量に買い込んで北の古城に向かった。 馬車を借りて、荷物を詰め込む。 ドラゴン退治と違って、ヴァンパイア退治には特に慎重になる。血を吸われただけなら、まだ対処のしようがあるが、もしもヴァンパイアの血を与えられると、与えられた者までヴァンパイアと化す。 2週間ほど馬車で旅を続け、やっと目的の古城にきた。 人の気配はないのに、庭の薔薇が咲き乱れている。 「ごめんくださーい」 大きな古城の入り口を叩いて声を出したライルはみなにボコボコにされた。 「アホか!退治にきたのになに挨拶しとる!気づかれたらどうするんだ!」 リジェネがハリセンで何度もバカ殿のヅラをかぶったライルの頭を殴る。 ギイイイイ。 重い音をたてて、扉が内側から開く。 「いらっしゃいませー」 全員、こけた。 中はかわいい女の子がメイド姿で行列を作っていたのだ。どこのメイドカフェですか、これとつっこみを入れたくなる。 「当店のご利用ははじめてですかー?」 かわいい女の子が、にっこりと笑って懐から短剣を取り出して、カカカッと、ライルに向けて投げる。 「はじめてでええええっすう!!!」 ライルは嬉しそうに女の子に飛びかかった。 短剣は動いたライルの背後に突き刺さる。 「あああ、オアシスだあああ!アイーン!」 嬉しそうに飛び込んでいくアホな弟を援護すべく、ニールが銃を取り出す。 「当店は会員制となっております。身分証明書はございますかー?」 「殿に身分証名称はいらんでアイーン!」 「バカ殿ですかー。では、当店での注意事項を説明いたします。マスターは最上階にいます。フロアごとに私たちの仲間が接客いたしますので、どうぞよろしくお願いいたしますv」 ちらりと、メイドはサービスで太ももを見せる。 ライルは目がハートになっていた。 「誘惑の魔法だ。気をしっかりと持たないと、ライルのようになるぞ」 刹那が、魔剣ソウルオブドラゴンを取り出して、構える。 ドラゴンをも切り裂く、炎の属性をもった魔剣で、魂が宿っている。 「オアシスだー」 アレルヤの目もハートになっていた。 ついでに、銃を取り出したはずのニールの目まで。 「君、かわいいね。名前はなんていうんだい?」 リジェネが、一人のメイドの手をとる。 「はぁい、私はマリリンと申しまーす」 リジェネは、そのメイドの喉を伸びた爪で切り裂いた。 装備した武器は、リングだ。爪が瞬時に鋭く伸び、岩さえも切り裂く。血まみれになって、喉から血をほとばしらせるメイドの返り血を浴びながら、リジェネはニヤリと唇の端を吊り上げた。 「ぶっ細工なお前なんかに用はないよ!」 リジェネは次々と爪でメイドを切り裂いていく。刹那は魔剣で。ティエリアはというと。 「ニールの浮気者ーー!!」 怒って、ニールをビンタしまくっていた。 「あれ。俺なにしてたんだ?」 正気に戻ったニールにさらにくるビンタ。 その手を掴んで、ニールはティエリアを引き寄せる。 キスの魔法。 いや、魔法じゃないんだが。 ティエリアはすぐに紅くなって、大人しくなった。 「アイーン!アイーン!っていつまでやらせるんじゃあああああああ!」 ライルが魔法の本を取り出し、木の枝を構える。見た目はすごくださいんだけど。 魔法執行書。それが本の名前。ページをめくって、適当に開いた場所にかかれてあった呪文を木の枝でなぞる。木の枝は、呪文を唱えるかわりになぞると魔法となって、執行する。ちなみに、ライルは魔法職についたことが今までなかったため、呪文は読めない。効果も分からない。適当に選んで使った。 「デッドヒーリング!?」 ティエリアが焦る。それは主にネクロマンサーが、自分のアンデットたちの傷を回復するために使う魔法であった。 「アホー!!」 リジェネのハリセンがうなる。 殺したはずの、メイドたちの傷が回復して蘇る。 「何敵を回復させてるんだ!見ろ、復活したじゃないか!ヴァンパイアの下僕たちは、ただでさえしぶといんだ!」 「アオシスだー!」 「お前もアホかー!いつまで魅惑の呪文にかかってる!」 リジェネのハリセンが、アレルヤの頭をスパーンと叩く。 血まみれでどろどろになったメイドたちの怖いこと怖いこと。 ニールが銃で頭をうちぬいていくが、動いたままこっちへむかってくる。まさにアンデット。 リジェネの爪と刹那の剣にはアンデットへの抵抗があるため、切るとアンデットは蘇らない。またやり直しだ。 「あはははは。怖いよ君たち。怖いよ怖いよ」 アレルヤは聖書でメイドたちをボカボカなぐる。聖書だけに、ボコボコにされたアンデットは動かなくなる。 それでも、上の階からメイドが次から次へと降りてくる。 アレルヤが、呪文を唱える。 「嗚呼、アーメン、ラーメン、ソーメン。神にラーメンあれ!ビュリヒルッド!(対不死福音)」 何が神にラーメンなのかよく分からない。呪文もギャグのようだが、そういう魔法があるのだから仕方ない。 メイドたちは、元の土くれになって、衣服だけを残して消えてしまった。 NEXT |