金色の海「金色の海で夢見る」







金色にたゆたう海の中でリジェネはまどろんでいた。
イノベイターとして生きていた頃の夢を見ていた。
ヒリングとリボンズを巡ってケンカして、リヴァイヴに呆れられ、リボンズに悪巧みを見つけられて怒られて・・・いろいろ悪戯したっけかなぁ。リボンズの服を全て女性ものにかえて、仕方なしにそれを着たリボンズを見て、腹をかかえて笑ったっけ。
綺麗な顔してるけど、女装がまるで似合ってなかった。
僕も何度も女装させたれたなぁ。その度に、リボンズは真剣な顔で結婚してくれないかとか言って、ヒリングにひっぱたかれて、リヴァイヴはその後ろで紅茶を飲んでいたっけ。
デバインやブリングはいつも遠巻きに眺めていたっけ。

ああ、懐かしい。
あの頃は楽しかった。
まだ、CBと本格的に衝突していなかった4年間。
ティエリアはその頃、涙を零しながら何度も挫折しては立ち上がって、一人でCBを再建していたそうだ。
それを考えると、本当に平和だった。
僕は、仲間が好きだった。イノベイターの、個性豊かなメンバーたちが。
いつもヒリングとはケンカして。リボンズとは漫才ごっこのようなこともしたかな。
リヴァイヴはいつも僕の愚痴に付き合ってくれたなぁ。
デバインとブリングは、僕に銃の扱い方を教えてくれたっけ。基礎的な戦闘術も彼ら二人に教わった。二人はいつも一緒にいたなぁ。さすがツイン、見た目も一緒なら性格まで一緒だった。
ヒリングとリボンズとは大違い。
僕は、他の仲間が人間に執着しない中で、よく地球に降りて滞在していた。それについて、呆れられたっけ。
リボンズは、人間を導くということである意味人間に固執していたけど、僕は自由気ままに生きていた。
イノベイターの仲間の一人として。
過ぎ去った時間は戻らない。
「寂しいよ・・・・みんな。ヒリング、リヴァイヴ、ブリング、デバイン・・・・リボンズ、どこ?どこにいるの?ねぇ、みんなどこにいるの?」

リジェネは目をあけた。
そこは金色の海。
イノベイターの仲間たちはいない。もうこの意識の世界にも、物質世界にも。
僕を残してみんな死んでしまった。
魂が、見れたら良かったのに。

ティエリアは、ニールの元に戻った。
「リジェネは?」
「まだ帰ってきていない」
いつも三人で過ごすクラブハウスには、リジェネの姿はなかった。
ヴェーダの記憶は多大であるが、ティエリアとリジェネはそのヴェーダの記憶の中に融合することでなじみ、ヴェーダの中の世界を変えることもできた。
最初は金色の情報の海しかなかった。そこから浜辺をつくり、海岸をつくり、空をつくり、月を、太陽を森を・・・いろんなものをつくった。
普通に、物質世界と同じように暮らすこともできる。
いつも、リジェネと一緒に眠るベッドには、ジャボテンダーの枕が二つ置いてあった。
片方はリジェネのものだ。

「僕、探しにいってくる」
「俺もいこうか?」
「ううん。僕だけに行かせて。いずれ、僕もニールもトレミーに戻らなきゃいけない。せっかくリジェネが用意してくれた肉体をこのままにしておけば、リジェネの命をかけた苦労が全て水の泡になる」
「俺は、いつまでも待ってるぜ?トレミーに帰るときは、お前と一緒だ。勿論、リジェネも」
「うん。ありがとう、ロックオン」
ティエリアはロックオンに抱きしめられ、唇を重ねてからクラブハウスを後にした。

きっと、リジェネは一人で眠りにつきながら、寂しがっている。
きっと、一人で泣いているはずだ。
僕には分かる。だって、僕は世界でたった一人のリジェネのツイン。リジェネの兄弟。

ティエリアは、金色に耀く海を見つめる。
砂浜をはだしでさくりさくりと踏んで、金色の海にとぷんと沈んだ。

さまよえる魂は、傷ついて。
素直になれなくて。
自分が一人だと思いこんでいる。
もう、君は一人じゃないよ。
全てを君が背負う必要なんてないんだ。

一緒に帰ろう?みんなの元へ。新しい、君の仲間となってくれるものたちのいるトレミーへ。
ねぇ、リジェネ。
リジェネ。
愛してるよ。
誰よりも。


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