金色の海「魂は見守っているよ」







「リジェネ、リジェネ」
金色の海を漂うリジェネを、ティエリアはすぐに見つけた。
傍に近寄ると、リジェネは泣いていた。

やっぱり、一人で泣いていた。
何もかも、一人で背負おうとする。まるで、昔の・・・四年前の僕みたいに。

「ティエリア・・・・・どうしたの。ニールは?」
「置いてきた」
「なんで?」
「君が哀しんでいるから」
「僕は平気だよ」
「だったら、どうして泣いているの?」
「僕は、泣いてなんか・・・・」
ポロポロと、幾つもの涙がリジェネの頬を伝い、金色の海に溶けていった。
「おかしいな・・・なんで泣いてるんだろ」
「寂しいんだね。イノベイターのみんなが懐かしいんだろう?自分は一人だって思ってるでしょ、リジェネ」
「一人じゃないか。僕には、もう。ティエリアはニールのもの。僕にはもう何も・・・・」
ティエリアは、瞳を金色に耀かせてリジェネとシンクロした。
暖かなたくさんの感情が、リジェネの中に流れ込んでいく。
トレミーの仲間たちの、暖かな微笑みがリジェネを包んだ。
「僕を・・・・受け入れる?新しい、仲間?」
リジェネは、呆然と呆気にティエリアの顔を見つめていた。

「帰ろう、リジェネ!元の世界へ!まだ、きたるべき未来は遙かなる悠久の時の彼方。ずっとここで眠っているのもつまらないよ。仲間が生きているうちに・・・・戻ろう。僕たちの、新しいホームに」
差し出された手を、リジェネは戸惑いながらも掴む。
ティエリアは、天使のように微笑んだ。背の白い翼がリジェネを包み込む。
その時、リジェネの背中にも白い一対の翼が生えた。
「天使の・・・翼?」
リジェネは呆然とした。

見えたのだ。
仲間たちの、イノベイターたちの魂が。
ブリング、デヴァイン、ヒリング、リヴァイヴ・・・・みんな、穏かに眠りについて、転生の環の中にいる。
リボンズの魂も、その環の中にいるのが見えた。
「リボンズ!!」
叫ぶと、ゆっくりとリボンズの魂は目覚めた。
とてもゆっくりと、まるでスロー画像を見ているように、リジェネの前に現れる。
「リジェネ。愛していたよ。僕は神になれなかった。同じように、君も神になれなかった。みんな、君を見守っている・・・一人で背負うことはない。さぁ、行きなさい。新しく用意された、未来へ」
「待ってよ、リボンズ、リボンズ!!」
リジェネは手を伸ばす。
リボンズの魂は、光となってまた天に昇ってしまった。

「未来へ・・・・君は、いけというのか。この僕に」
「さぁ、いこう、リジェネ。一緒に。愛してるよ」
ティエリアは、泣き続けるリジェネの唇に唇を重ねる。
ツインは、シンメトリーを描きながら金色の海を漂う。
優しく、優しく、優しく。
天使のティエリア。悪魔のリジェネ。
その背中には、今、天使の翼が生えていた。魂が昇華したのだ。更なる上の存在へと。
ティエリアは、だからニールを見つけて会うことができた。
リジェネも、やっとリボンズと会うことができた。リボンズはリジェネを見守っている。そっと、廻る環の中から、いつでも。

「うわあああああああああああ」
リジェネは泣き叫んだ。
何度も、何度も。
ティエリアを抱きしめて、その背中に爪を食い込ませて絶叫する。

僕は、一人ではないんだ。
僕も、人間になれるだろうか。ティエリアのように。人間に。

「なれるよ。人間に。さぁ、一緒に戻ろう。世界へ・・・・」
リジェネを連れて、ティエリアはクラブハウスに戻る。
もう、この世界にニールはいなかった。


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