血と聖水[「自害」







アルザールは、綺麗な緑の瞳で笑っていた。
ロックオンを思わせるような、エメラルド色の瞳。ロックオンを思わせるような、茶色の柔らかなウェーブのかかった髪。白色人種の白い肌。
ロックオンを思わせる因子はたくさんあるのに、全くロックオンに似ていない。
容姿すらも、ロックオンの少年時代と言われても納得ができてしまいそうだが、ロックオンに似ていない。
こんなに純粋な邪気など、ロックオンは持っていない。
ロックオンは、こんなに醜く歪んでいない。

「僕は、ロックオンのものだー!!」
呼吸を止めて、ティエリアは金色の瞳を大きく開けた。
着ていた衣服が、血の刃で破かれたのだ。
「な、何を考えている!」
破かれた部分を手で合わせて、ティエリアは激怒した。
「言っただろう?主を上書きするって」
その言葉に、このアルザールが本気であることを知って、ティエリアはロックオンの背に匿われた。
「ふざけたことぬかすな!ティエリアは俺のもんだ!」
「そうだ!僕はロックオンだけのものだ!」

アルザールは血の刃をいくつも放った。それは、ロックオンを、刹那を傷つけていく。
血で出来た刃で、何度もロックオンとアルザールは切り結んだ。
「この程度?五代目にもなると、随分と力が衰えるんだね」
アルザールの血の剣で、ロックオンは串刺しにされた。
「ロックオン!」
ティエリアが駆け寄る。
刹那は、すでに重症でとても戦闘ができる状態じゃない。
「命の精霊リーブよ、二人の傷を癒せ」
ティエリアは、命の精霊リーブを呼び出すと、二人の傷を癒す。
ティエリアは回復系の魔法が得意ではない。
刹那はなんとか血が止まった程度、ロックオンの傷口も塞がらない。
「どうしよう」
逡巡している間に、抱き上げられた。

「離せ!」
「随分と元気がいいね。その血、もらうよ」
首筋に噛みつかれ、吸血される。
「あああああ」
凄まじい恍惚感がティエリアを襲う。
ざまぁみろと、ティエリアは思った。ティエリアは、血の中に水銀をもっている。
全てのヴァンパイアにきく毒、銀。
普通なら、喉をかきむしって、のたうちまわるところだろう。
なのに、アルザールは平気でティエリアの血を飲み干していく。
「上書き第一段階終了」
吸血された後は、ロックオンは必ず人工血液製剤を与えてくれた。血液が不足して、ティエリアは意識が遠のきかけていた。

アルザールは、自分の手首を噛み切って、ティエリアに血を与える。
「これで、君は僕の血族だ。新しいネイの、ね」
ティエリアは、自分の力のなさに、悔恨の涙を流す。
「や、めろ」
ロックオンが見ている前で、ティエリアは服を剥ぎ取られていく。

「見せ付けてやろうじゃないか。僕らの血族としての絆を」
深く唇が重なる。
嘔吐感に、ティエリアは身を捩る。
そのまま、ビリビリと、ティエリアが着ていた服の全てをアルザールは破り捨てた。
「みるな!」
白い裸体が、浮かび上がる。
ステンドグラスの堕ちる光を受けて、神秘的に耀いていた。
ブラッドイフリールであるアルザールは、全身の炎を消して、ティエリアを抱いていく。
首筋に、鎖骨に、胸に、自分のものであるという所有の証を残す。
「あれ?キスマークがいっぱいあるね。全部書き換えようか」
「やだ!!」
膝を足で割られる。
「へぇ、中性の神子か。いいねぇ」
ペロリと、アルザールが唇を舐める。
平坦な胸の先端をいじり、つまみあげる。
「いや!」
泣き叫ぶが、ティエリアはこのまま汚されるくらいならと考えていた。
「ティエ・・・リア」
血まみれのロックオンが、アルザールに組み敷かれたティエリアを見ていた。
「見ないで!いや、見ないで!!」
秘所に指が浸入する。
「ああああ」
アルザールが、ティエリアを引き裂こうとした瞬間、ティエリアは舌を噛み切った。



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