「最後の夏」C







幸せな時間は、あっという間に過ぎ去ってしまう。
そう、あっという間に。
季節が移り変わっていくのなんて、ぼーっとしていれば本当にすぐだ。桜が咲いていたかと思えば蝉が鳴き、紅葉が葉を落として雪が降ってくる。
日本の四季は美しいとおもう。

そんな感傷にひたりながら、あきらは復学してしまった夜流が、この家には戻らず如月家に帰るようになってしまったのを、ただ俯いて、じっと押し黙って、早く彼がこの家に遊びにこないかと、携帯を見てはメールを打つ。
(ナイト、寂しいよ。会いたい)
(ごめん、今日は無理だ。両親に掴まった)
(そう。じゃあ、明日でもいいから。ずっと、待ってるから)

メールでやりとりをするのは、声を聞いてしまえば、泣き出してしまいそうだからだ。いつもは側にいてくれる夜流は、復学の忙しさと軋轢の入った両親と仲をもとに戻すために必死だ。今、如月夜流の両親は、大事な一人息子の夜流のことで離婚問題に直面していた。
その原因のほとんどはあきらのことだ。
だから、あきらもそれを分かっているので如月家の夜流に会いたいからと押しかけることもできない。
夜流の両親が離婚してしまうなんていやだ。それも自分のせいで。

「会いたいな・・・・・」
ぼーっと、ゲームをしながらそんなことを毎日、一日に何度も呟く。
それでも暇を見つけては、夜流は夏樹家に来てくれて、あきらに会いにきてくれる。
でも、一緒に生活していた前と違って、会う時間はずっとずっと少なくなってしまった。
本当に、幸せな時間が過ぎ去るのは早い。

ピンポーン。
チャイムが鳴って、あきらはそれに気づいて自室を出ると、玄関までやってきた。
母の瑞希は仕事でここ最近ずっと帰ってきていない。ほとんど毎日、あきらは広い夏樹家で一人で生活していた。瑞希は心配性で、どこか施設にでもあきらを入れさせるつもりだったのだが、あきらが拒否したので、今まで通り、夜流にできるだけあきらの側にいてくれるように頼み、カナダに飛んでしまった。

ピンポーン。
またチャイムがなる。
「はい、今出ます」
玄関でサンダルを履くと、あきらは扉をあけた。
「やあ、久しぶり」
「・・・・・」
相手は、蓮見だった。
インターフォンで、相手の確認を怠ってしまった自分に、あきらは自分を呪いそうになった。
「くるな!」
「やぁ。一人なんだって?夜流がね、心配で様子見にきてくれってさ。だから、見に来てあげたよ」
「ナイトは、何も知らないから。出てけよ!!」
扉を指差すあきらに迫り、蓮見健太郎は懐から何枚かの写真を取り出して、それをあきらに見せた。
「・・・・・何、これ」
暗闇だけど、何が映っているかは分かった。あきらと夜流がSEXしているシーンの写真だった。
「これ、ばら撒かれたい」
「や・・・」
あきらは涙を零した。
「やだ!お願い、止めて!」
「じゃあ、あがってもいいね?」
「・・・・・」
蓮見は、勝手にあがるとそのままあきらの手を掴んで、リビングルームにまで連れてくると、そこの床に押し倒した。
「何、するの」
「お前をレイプするんだよ」

ああ。
「ナイト、ナイト!!」
暴れるあきらの腹に蹴りをいれて、蓮見は笑った。
「ぐ・・・・う」
呼吸もままならず、涙を流すあきらの口にガムテームを貼る。
それから、もってきた八ミリビデオをまわしはじめた。
「さぁ、ショーといこうか。あきらちゃん」

「ううう・・・・」
衣服をカッターでビリビリに破かれ、そのまま下着姿にされた。固定された八ミリビデオが全てを撮影している。

死にたい。
あきらは本気でそうおもった。
でも、舌を噛む勇気もない。

いやだ。
いやだよ。助けて、ナイト。
ナイト、ナイト、ナイト!!

 



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