休学復帰







夜流は、大学にまた通い出した。
夏樹家からではなく、自宅から。

蓮見の携帯から、あきらが蓮見を好きになったので別れようと突然いわれて、納得できなくて、蓮見に直接会ってから次にあきらに会った。
「あなたなんて知らない。僕のナイトはこの人」
そう言って、蓮見の腕をとるあきらを、夜流は信じられない表情で見ていた。
「分かっただろう?あきらちゃん、俺のことが好きなんだって」
「そんなこと!俺が分からないのか、あきら」
「・・・・如月夜流」
「あきら!」
「俺、お前とは別れたの。もう、この家にこないで」
夏樹家の玄関で、あきらは夜流に冷たく言い放つと奥に消えてしまった。

「はぁ・・・・失恋かぁ」
夜流は、大学でちらちらと散っていく紅葉の木をみあげる。
季節は夏からもう秋になろうとしていた。
あきらは本気で夜流と別れたいと何度もいってきて、ついに夜流はあきらとの別れを承諾した。
今、夏樹家にはあきらの他に蓮見が住んでいる。
そう、まるで自分の代わりのように。
蓮見は、夏樹家から大学に通っている。瑞希も戸惑ったものの、あきらが選んだ相手なら仕方ないと夏樹家で蓮見が暮らすのを許した。

「俺、なんだったんだろうな?」
蒼い空を見上げる。
3年間の、この恋は。
ずっと、このままあきらと一緒に歩いていくのだと信じていた。いつかアメリカで結婚式をあげてマイホームを構え、そこに一緒に住むのだと。
今思えば、子供じみた夢なのかもしれない。

「よお、夜流」
「蓮見・・・・あきらは、元気か?」
「ああ、元気だよ。遊びにくるか?」
「いや。あきらが嫌がるから、止めておく」
夜流が遊びにくると、あきらは泣いて嫌がり逃げ出すのだ。そんなあきらを見たくなくて、あきらの携帯にメールするのもピタリと止まってしまった。
蓮見と夜流は、同じゼミで授業を受けた。
哲と一緒に昼食をとる。
蓮見とあまり一緒にいたくない気分だ。そう、恋人をとられたのだから。
蓮見の顔もあまり見たくない。

「で、すみません、留学の話なんですけど」
夜流は、全てを忘れるように、留学する時期を早めることに決めた。
カナダにいって、また一から人生やり直してみようか。
1年で戻ってくる予定だけど、戻ってきたらもう一度あきらに告白してみよう。
今は、側にいることもできない。
あきらは俺をみて怯えて怖がって泣くだけなんだから。

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透のマンションに久しぶりに遊びにいった。
そこで、マサキや哲に、あきらと別れたことを告げる。
「まじかよ?」
「ああ、別れた」
「あんなに仲よかったのに」
「あきら、新しい恋人ができたんだ。そいつと今一緒に住んでる」
「そいつの名前は?」
「蓮見」
「げー、あの蓮見かよ!」
哲が、コーラを吹き出した。
「俺、カナダに留学するんだ」

「え?」

みんな、耳を疑った。

「俺さ。両親がカナダに留学措置をかってに決めちゃって。ほんとはあきらも連れていくつもりだったんだけど。別れたし。俺一人でいくよ」
「いつ帰ってくるんだよ」
「さぁ・・・1年後の予定だけど。もしかしたら、帰ってこないかもしれない」

みんな、暗い表情になってそのまま解散した。
夜流にかけるべき言葉も見つからない。
 



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