古ぼけた教会だった。 瑞希立会いの元で、夜流は結婚式を挙げた。 神父だけを雇った結婚式。 賛美歌が流れる。 瑞希は涙を流していた。 「汝は、健やかなる時も病める時も、夏樹あきらを妻として迎えますか?」 「はい」 神父に聞かれて、正装した夜流はきっぱりと言い放った。 「では、よいでしょう」 神父は聖書を読み上げる。 隣に、いるべきあきらの姿はない。 あきらはもう1年以上前に、死んでしまったのだから。 代わりに置かれていたのは、あきらが最後まではめていた、夜流とお揃いのペアリングだった。 そのペアリングにブーケを置いて、夜流は結婚式を挙げた。 そう、故人であるあきらと。 「約束、これで果たせたよな、あきら?」 ペアリングは綺麗に耀いていた。 ふと、あきらの幻影をみた気がした。 「ありがとう、ずっと愛してるよ、夜流」 ウェディングドレス姿じゃなくって、男性として正装したあきらの姿が、確かに夜流の瞳に映った。 光耀くあきらは、夜流に触れるだけのキスをすると、翼を広げて大空へと旅立ってしまった。 「あきら!」 「どうしたの、夜流?」 瑞希がびっくりして、首を傾げた。 「いいえ・・・なんでも、ありません。これで、俺とあきらは夫婦だ。どっちが妻で夫かなんてこの際、どうでもいいか」 賛美歌を聴き終えて、二人はそのままの姿であきらの墓参りに出かける。 あきらの墓はいつも綺麗に整えられて、白い薔薇の花が捧げられていた。 「本当に、夜流はあきらのことが好きだったのね」 「はい。今でも愛しています」 「私もよ。あきらを愛しているわ」 二人は、遠い空を見上げる。 きっと、そこにあきらはいる。 あきらが、見守っていてくれる。 陽だまりのような笑顔を浮かべて。 NEXT |