2014春 「卒業」@







2014年3月。
夜流もあきらも、中学校を卒業した。
友達の哲、マサキ、透も卒業した。

みんな、女子は固まって花束をもって泣いたりしていた。
男子はなんともいえない顔をして、友人に最後の別れをいったり、女子から告白されたり、逆に告白したり・・・。
短いようで長かった義務教育の最後の3年間。
思い残すことはないかと聞かれると、たくさんある。まだまだたくさん友達と遊びたかった。
でも、もう終わりだ。同じクラスメイトとして、同じ学校で学び、遊んだりふざけあうのも最後だ。

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「あの・・・・如月夜流君!!」
「うん?」
夜流は、隣クラスの女の子に呼び止められた。
夜流は、去年に女子に振られてから、誰とも付き合っていなかった。
「あの、あの・・・・桜の木の下、あっちにいきませんか。話があるんです」
「あーうん。いいよ」
女の子は、潤んだ目で、夜流を見上げると、告白してきた。
「夜流君!ずっとあなたが好きでした!高等部も一緒だし・・・お願い、付き合ってください」
「えーと・・・」
「今、フリーなんですよね?知ってます、夜流君がもてるってこと。でも、告白した子とは大抵付き合うって。いつかふられるかもしれないけど、でも告白しないまま終わるより、私・・・・」
「ごめん」
「え」
「俺、今、付き合ってる子がいるんだ」
「嘘!だって、学校じゃ誰とも」
「違う学校の子だから」
「誰ですか、それ!」
夜流は、適当に名前を言おうとして、迷う。
「ホントは、いないんじゃないですか!?お願いです、付き合ってください!」
夜流は、桜を見上げ、それから春の空を見上げてから、ある名前を思い出した。
「いるよ・・・・あきら」
「あきら?」
「そう。あきらって子が、俺の彼女なんだ。だからごめん」
「そんな・・・・」
桜の花が、女の子の涙と一緒にざあぁぁと花を散らす。

「あーいた、夜流ーー!!!あきらきたぞー!」
透が、ぶんぶんと向こう側で手を振っていた。透の後ろには、あきらがいた。あきらは、いつも通り女生徒の制服姿だ。
「げ!!」
それを見た夜流は、タイミングの悪さに蒼白になった。
「あきら・・・・あの人が、あきら・・・・」
女の子は、たたたたとあきらの方に走っていく。
「私立聖マリエル学園・・・・私より、かわいい・・・美人・・・・あなたがいなければ!」
パァン。
女の子は、いきなりあきらの頬を平手打ちした。
何が起こったのか理解できないあきらは、そのまま叩かれた頬に手をやって、目をぱちくりとしている。
女の子は、また手を振り上げる。
その手を、透がつかむ。
「どういうことだよ、夜流?」
「あー。あきら、お前、俺と付き合ってるよな!?」
「はひ!?」
あきらは、目をぱちくりとさせて、地面がひっくり返るような声をだした。
「付き合ってるんじゃないの?変よ・・・・なんで驚くの・・・・付き合ってないんじゃないの、ほんとは」
「そ、そんなことねーって!!」
ぶんぶんと夜流は首を振る。つられて、あきらもぶんぶんと首を振った。綺麗にゆわれたツインテールの髪が左右にぶんぶん動く。
その様子がかわいくて、透は女の子の手を離して、声もなく笑うのを我慢している。
「証拠、証拠見せてよ!じゃなきゃ、納得いかない!」
女の子は、甲高く叫んだ。

「あー、証拠ね。あきら、こっち来いよ」
「あい?」
夜流は、もう破れかぶれだとばかりに、あきらの腰に手をまわし、顎を上向けると、なんとそのままキスをあきらにしてしまった。
「ん・・・・んん」
百戦錬磨と呼ばれた男、如月夜流。
ついつい、ディープキスになった。
「ん・・・・」
ぬるりと口内に入り込んできた舌の動きに、あきらの思考は完全に麻痺していた。
そのまま唇を甘くかんで、こちらの舌をなぞるように動いて、口内を蹂躙する。
「んあっ・・・・」
糸をひいて夜流の舌が去っていくのと同時に、たっていられなくなって、あきらはその場に屑折れる。
その細い体を抱き寄せる。
耳元で、夜流があきらに囁いた。
「ちょ、やりすぎたごめん・・・・彼女のふりしてくんない。あの子しつこいんだよ」
「んだよそれっ・・・・・俺、ファーストキスなのに!」
女の子に聞こえないようにやりとりをする。
あきらは真っ赤になって、夜流の胸に顔を埋めた。
夜流の顔を、まともに見ていられない。
恥ずかしすぎる。

ちょっとやべ・・・ちょっと、きた。
なんでこういう反応するわけ、あきらってば。
かわいい・・・・つか、まじ俺腐ってる。
あーもう俺だめだーあ〜。
あきら、まじごめん。あとで何発でも殴ってくれ!

一方のあきらは。
思考が麻痺して、何も考えられなかった。
ただ、骨が痺れるような甘い感触だけが背筋を通り抜けて、うまくたっていられない。
なんだよ俺・・・・なんでキスされたくらいで、こんなにまいってんだよ。
これはただの芝居だろ、芝居!
夜流、覚えてろ。あとで、ボッコボコにしてやる。

空を、二人は見上げた。
そういえば、二人とも空を見上げるのがすきらしい。
春の風がふく空は、やっぱり青かった。



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