レンカ、ぼえー







「ぼえー」

「どうした、レンカ?」

侍女に薔薇風呂に入れられて、衣装を調えられてレンカはユリシャと一緒に部屋で過ごしていた。

「あー。終わった。俺終わった。お婿にいけない」

「いく必要はないだろう。レンカは私の寵姫だ」

枕を投げると、それはユリシャの顔にヒットした。

「お前のせいじゃぼけえええええええ!!」

「あーうん、私のせいだな」

ユリシャは明るく笑っていた。

今までのどんな寵姫よりもレンカに惹かれていくのが分かる。同性を抱いたのははじめてではない。何度か経験はあるが、寵姫にまでしようと思った存在はレンカだけだ。

初めて出会った時も、レンカは丹精こめた薔薇園の薔薇をめちゃめちゃにして寝そべっていた。

最初のレンカは消えたけれど、その後に入れ違いできたレンカも性格は変わらない。

レンカとの出会いは、アルザが黒き神の一族を連れてきたという言葉から始まった。

であってみると、黒い髪も黒い瞳もなかった。

ただ、長い白髪にオレンジのメッシュ、それに銀の瞳。変わった色彩だった。始めは美しい少女だと思い、そう扱っていたのだが、男だと言ってふてくされた。

藤原の血の者を外に出すわけにはいかない。庇護者がいなければ。

藤原の血は、今では世界を制覇する者が引く。もしもレンカが子供を作れば、その子供は世界を制する子として、このサーラを治める新たなる王か皇帝になるだろう。

だからこそ、後宮に閉じ込めたのだ。

そう、世界を制しているのは今はユリシャだ。ユリシャにこそ、レンカの存在は相応しい。

たくさんの家臣たちもそう進言した。ユリシャを寵姫にすべきだと。
すでに皇后はいるので、皇后の男版である皇婿にできなくもないが、そこまですると権力争いに巻き込まれ、皇后一族や他の後宮の姫たちから暗殺の的になってしまう。

寵姫止まり。それが相応しいと、誰もが言った。

もっとも、レンカを後宮に入れた時点で後宮の姫はレンカを敵対視して、たくさん嫌がらせをおこなってきた。

これが気の弱い少女なら、後宮から逃げ出していただろう。

レンカが後宮から逃げようとしたことはない。外の世界がいかに危険であるかは知っているようだし、レンカのような美貌に珍しい色彩が加わると、奴隷商人に目をつけられて売られてしまうかもしれない。

奴隷制度は廃止したが、それでも自治国家では奴隷制度はまだ残っている国がある。そんな辺境まで売られてしまうと、流石になかなか探し出せない。

「レンカ、私とラブラブを」

「するかぼけー!」

俺はユリシャの頭を自分でつくったハリセンで張り倒した。

「ううむ。どうしてそんなに機嫌が悪い?」

「腰が痛いんじゃぼけー!手加減しろやー!」

「なるほど。初めてであったな。すまなかった」

「ぼえ〜」

レンカはぼーっとしてから、アルザが持ってきたTVゲームをしだした。

「これはどういう仕組みになっているのだ?解体してもいいか?」

「解体すんなー!」

ハリセンでまた殴って、レンカはゲームの邪魔だと、ユリシャを追い出してしまった。



NEXT