「やあ、レンカ姫」 「あ〜ん?」 開け放たれたままの窓から手を振っているのは、ユリシャの親友のニア王太子だ。 「デートしませんか?」 「格闘ゲームで勝ったらしてやる」 「はい?」 こうしてニアはレンカ指南の元、格闘ゲームの仕方を教わり早速対戦した。 「おおおおお・・・・」 完膚なきまでに叩きのめされたレンカ。 試合前に、勝っほうが女装することになっていた。 「ドレス着て下さいね」 「NOOOO!!なんでこの世界は男にドレスなんじゃああ!!」 「美しい若者は、普通に女の衣服も着ますが?」 「それがおかしいんじゃああああ」 そう叫んでいる間に、侍女がすでに作っていたレンカのサイズのドレスを着せていく。ドレスといっても、中世風のビラビラしたやつじゃなくって、ゴシックロリータっぽいやつ。 とりあえず、下に半ズボンはいたし。胸元とかはあいてないし。 まぁまだましか。 ヘッドフリルとかまでつけられたけど。 そのままニアに連れられて、後宮から出ると、宮殿の中庭を散歩する。 「楽しいかお前?男とデートして?」 「楽しいですね。あなたはユリシャの寵姫。僕は唯一、この国の皇族でないのに、後宮に入ることを許された男性。僕くらいでしょうねぇ、ユリシャの寵姫や皇后と二人きりになるのを許されるのは」 「そんだけ信頼厚いってことだろ?」 「ええ、そうですね」 ニアはレンカの手をとって歩き出す。 そこに、ちょうど皇后と庭を散歩していたユリシャとばったり出会ってしまった。 「ニアか。珍しいな」 「そういうユリシャも。カレナ皇后と二人きりなのは珍しいな」 カレナ皇后は、俺をじっと睨みつけてきた。うわー女の嫉妬って怖いわ。 「いこう、カレナ」 「はい、陛下」 カレナはすれ違い様に耳打ちで囁いた。 「下賎ですこと」 「・・・・・・・・・なぁ、ニア、皇后の頭はたいたらやっぱ罰せられる?」 「さぁ、どうでしょうか。寵姫は皇后に継いでの地位ですが。やはり上の身分の者をないがしろにすると罰せられるのでは?それがこの国の基本ですから」 「ふーん」 俺は、ハリセンが手元にあったら皇后の頭をはたきたい気持ちになっていた。 ムッカツク〜。 なんだよ、自分は皇族だからってさ。そりゃ俺は寵姫ということになってるけど、元は身分もなんもねーよ。 うんこー! 去っていくカレナに向かって、心の中でそう罵った。 カレナの頭の巻き毛がウンコに見えてきた。ちょうど茶髪だし。 よし、今度からうんこ皇后と呼ぶことにしよう。 「何を考えているのか、大体分かります。カレナ皇后の悪口でしょう」 「おーその通り・・・つかさ、中庭なんか散歩しても楽しくないっつの」 「まぁまぁ。部屋の中にばかり閉じこもっていると体に悪いですよ」 俺はニアに連れられて、噴水のところまでくるとベンチに座った。 「疲れた。やっぱ普通の衣服がいい」 ニアの衣服は貴公子っぽくて、いいなぁと思った。ユリシャの服もそんなかんじだ。 貴公子のような服は、身分を現すらしい。男でも美しさを強調したい時は髪に花を飾り、俺がいつも着ているようなリトリア風のヒラヒラで露出度がちょっと高い服を着たりするらしい。 「ニア―――」 顔をあげたとき、キスをされた。 「お前もかい。俺なんで男受けがいいんじゃー」 「あなたが、ユリシャの寵姫でなければ、連れ帰ったのに」 ニアはかなり本気そうだった。 「俺男だから!!」 「知ってますよ」 ニアは柔らかく笑った。 「今度、剣の試合でもしましょうか?」 「お、それいいね!」 ニアと俺は、後宮の俺の部屋に戻ると、夜が更けるまで一緒にゲームをしまくった。 よい友人ができたと思う。 ユリシャがやってくると、ハリセンでまた殴って、レンカはゲームの邪魔だと、ユリシャを追い出してしまった。 NEXT |