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その日は、カレナ皇后の誕生式パーティーだった。
リトリア帝国中から、王族や皇族貴族たちが集う。自治国家にはたくさんの王族皇族貴族がいるから、会場はもう人で溢れ返っていた。
宮殿に入れない貴族たちは、中庭などでのパーティーを楽しんでいた。
「いこうか、カレナ」
「はい、陛下」
カレナ皇后は美しく着飾り、皇帝ユリシャと二人で皆に挨拶にまわりだす。
カレナ皇后の誕生日を祝うのも王族皇族貴族たちの楽しみであったが、今日は後宮中の美姫も全員皇后祝福のため後宮から宮殿にきている。
無論、寵姫も。
寵姫、クローディア姫、サリア姫、イヴァル姫も会場にきている。無論、レンカも。
どの姫君も美しいと、男性は目の保養にしているし、普段は他の男性をみれない後宮の姫君たちは、ユリシャとは違う殿方たちを見て楽しんでいた。
「見て、あれが新しく寵姫にされたレンカ姫だ」
場内がざわつくのが分かった。
レンカは、腰に剣を帯びて、和服を着ていた。特別に作らせたという服を、レンカはすぐに気に入った。びらびらした衣服なんかよりもよほどまし。浴衣のような服だった。
ユリシャがその服を作らせたのは、和服だとレンカがズボンをはかなくてちらちら見える白い太ももが気に入ったから。いわゆるチラリズム。胸もわりとあいているし、普通のリトリア風の衣服にはない色気がふんだんにある。
他の姫君がレンカと同じ服をきても、きっと似合わないだろう。
あくまで日本人として育ってきて、ちゃんと和服の着方を知っているレンカだからこそ似合うのだ。
腰に聖剣シルエドを刀のようにさして、足は下駄とこりまくりだ。
「まぁ、なんて下品な!大勢の殿方がいる前で、あんな肌の露出するような格好!!」
他の寵姫たちは、レンカの姿を見て眉を潜める。
あくまで美しく後宮で着飾り、露出度の高い衣服を着るのはユリシャに見てもらうため。こういった正式な会場では、いつもより派手だけれど、露出度を控えたドレスを着るのが慣わしだ。
「ドレスは仕方ないけど、リトリアの服も着ないなんて下品だわ〜」
でも、他のやってきた王族皇族貴族たちには、レンカは異界の姫君として十分に映っていた。寵姫の身分を与えられたので、レンカは王子ではなく姫である。
「あれが異界の、黒き神の一族に連なるレンカ姫か。美しいな。黒髪黒目でないのが惜しいが」
「でも、白髪も美しいではないか。オレンジのメッシュはお洒落か?銀の瞳はまるで月のようだ」
レンカの、この世界にきてやたら磨きがかかってしまった容貌を褒める声も多かった。まるで、元の世界にいた頃とは別人のようになってきたレンカ。
サーラの地にきてから、美しくなったと自分でも思う。女などに負けないくらいに。何故ここまで容姿が美しくなるのか。多分、内在するカッシーニャが原因であるのと、ユリシャに愛されたのが原因だろう。
最初はまだ元の世界にいた頃よりちょっと美人になった?程度だったのに、最近は本当にどの美姫よりも負けない容姿になってきている。
寵愛を受ける他の寵姫や皇后は、もうこれ以上は美しくならないだろう。もう十分に美しくなったのだから。
レンカは自分の容姿などどうでも良かった。
適当にぶらついて、ユリシャの顔を見てから、適当に会場のシェフ自慢の料理を食べる。無論マナーなんてない。
「面白いなあのレンカ姫は。まるで町娘のようだ」
後宮の姫たちと違って、招待された者たちにレンカを詰る声はなかった。
そこに、嫉妬がないからだ。
「清楚だが、行動が面白い」
レンカは、果実酒を飲み干すと、なんと会場の柱に寄りかかって、座り込んだ。
「きゃあ、なんて下品なの!」
後宮の姫たちが大勢悲鳴をあげる。
その姿に、カレナ皇后は怒り、侮辱されていると思ってレンカの前までくる。
「何か?」
「あなた・・・陛下の寵愛をうけているからと、いい気になるんじゃなくってよ!」
パン!
レンカは何故殴られたのか分からなかった。別に、カレナ皇后に何もしていないのに。
でも、やられたらやり返すのがレンカの基本。
レンカは、流石に皇后の頬をビンタし返すのはまずいかと思って、近くにあった果実酒の入ったグラスを手にとると、その中身をなんと皇后の顔にかけてしまった。
「あちゃ〜」
ニア王子が顔を覆っている。
「な、な、な!!!」
カレナ皇后は屈辱に体を震わせ顔を真っ赤にした。
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