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次の日は一日中ベッドの上だった。
その次の日には、もう起き上がってゲームをやっていた。そこへ、ユリシャが訪れて見せたいものがあると言ってきた。
それは、鏡であった。
鏡から、映像が出てくる。
「うわ、なんだこれ?」
「660年前、この世界を救った黒き聖女、藤原マリカ、そして銀のメシアであるフェルナンド。つまりは君の両親だよ」
「なんでそれを」
レンカが驚く。
「アルザが教えてくれた。聖者アルザは、レンカを、地球というレンカのいた時代に飛ばした張本人だからね。今はもう、こっちに来るだけで戻す力はないらしいが」
「あの猫がぁ?」
「そう」
皇帝ユリシャはその映像を映し出す鏡をレンカにくれた。
しばらく一緒に見つめていたが、マリカが我が子のために、フェルナンドと一緒に言葉を残す場面になっていた。
「あなたを産んだのに、育ててあげられなくてごめんなさい。私は、これからフェルナンドと最後の聖戦をします。命をかけあった戦いを。でも覚えておいて、レンカ。私もフェルナンドもあなたをとても愛しています」
「やぁ、レンカ。この映像を見る頃、俺は生きているのか死んでいるのか分からない。でも、レンカ。俺は父としてお前を愛しているよ。マリカと一緒に育てたかった」
たくさんの言葉。
本当の父と母の姿。
母であるマリカは、どことなくレンカに似ていた。
「なんだよこんなもん」
レンカは涙ぐんでいた。
「好きなだけ泣くといい」
ユリシャはレンカを抱き締めた。
レンカはユリシャの衣服で流れる涙を拭って、その鏡をTVの横に置いた。
「少し、一人になりたい」
「分かった」
レンカは、頭の中がごちゃごちゃになっていた。
660年前の母と父?時空をこえて俺は飛ばされたのか。
いや、そもそもマリカ姉ちゃんは、いや、母であるマリカは5年前は一緒に元の世界にいた。
この異世界サーラに飛ばされると、どうも伝承などからしても、藤原一族で行方不明になった15〜18の全員がこっちの世界に来ているようで、そして時間さえもこえてこの世界にたどり着くらしい。
ようは、去年飛ばされたのにこの世界では1000年くらい前に飛ばされたことになったり。
時空さえも超えて。そして俺も時空さえも超えて地球に飛ばされた。
本来はサーラで育つべきだったのに。
そう、俺はマリカとフェルナンドの子。カッシーニャを宿したままのフェルナンドの子をうんだマリカ。
俺の中に、カッシーニャの化身ともいえる存在があるのは、そのせいだ。
もっとも私生活に影響はないし、カッシーニャに支配されることもない。逆に支配できる。
本当の父と母にとって、俺は必要とされる子だったのか。
そう思うと涙が止まらなかった。
一度でいいから、本当の父と母に会いたかったがもう死んでいる。
でも、こんな映像でも見ることができてよかった。育ててくれた父さんと母さんもちゃんと愛しているけど。でも、産みの親も愛していてくれたなんて思わなかった。
てっきりいらないから捨てられたのだと思っていた。
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