レンカ、倒れる







「レンカ」

「やーだー!」

「来なさい!」

ユリシャに引きずられて、レンカはニアの屋敷を出ると後宮の元の部屋に戻された。そこにはイヴァル姫とクローディア姫がいた。

「二人に謝りなさい」

「絶対やだ!!」

「レンカ!!」

ユリシャはレンカをぶとうとして、やめた。

「レンカ。お願いだから、騒ぎは起こさないでくれ。ただでさえ、お前の立場は危ういのだ」

「知るかよ・・・・・・・・」

「レンカ!」

「お前が勝手に俺を寵姫にしたんだろ!俺なりたくなかったのに!俺は・・・・」

ユリシャが悲しそうに目を伏せる。

そう、レンカを無理矢理寵姫にしたのはユリシャだ。

「レンカ?」

「なかった・・・・のに・・・・」

レンカは大きな銀色の瞳から涙を流して、倒れた。

「レンカ!?」

額に手をあてると、凄い熱だった。

「ニア、医師を!」

「分かった」

ニアが急いで宮殿の医師がいる場所へ走っていった。

「いつからだ?こんな凄い熱・・・」

「陛下、そんな者にいつまで寵愛をかけるのですか?」

「そうですわ。酷いんですのよ、レンカ姫!」

(うるさいわ!ええい、黙っておろうと思ったがお主らが悪いのではないか!!)

ざぁっと、室内で水が渦巻いた。

「なんだ・・・・ウンディーネ?」

(そうじゃ。これを見よ、皇帝よ)

ウンディーネは水鏡で二人の寵姫がレンカにした仕打ちを全て見せた。

「これは・・・イヴァル、クローディア!!」

二人は泣きだした。

「陛下が悪いのよ!レンカばかり構うから!」

「そうよ!!」

ユリシャは言葉をなくす。

そうとは知らずにレンカをぶった。

レンカ・・・・。

**************

医者の診断だと、精神的な疲れと判断された。

ニアの屋敷に止まった時から、体調がおかしかったらしい。

すでに、前から体調があまりかんばしくなかったのかもしれない。サーラの世界での生活は、あまりにレンカの今までの生活と違いすぎる。

たくさんの後宮の姫からの嫌がらせに耐えて、明るく振舞うレンカ。

もしも、本当は打たれ弱いのだとしたら?

ユリシャはレンカの部屋でレンカの看病をしながら寝泊りした。

熱は3日下がらなかった。

「帰りたい・・・」

時折うわごとでそういうレンカの言葉が胸に痛かった。

手放した方がいいのだろうか、レンカを。

でも、何処へおけばいい?

レンカを抱かないほうがいいのだろうか。でも愛してしまった。どうすればいい?

「レンカ」

長い白髪をかきあげてやると。レンカは大分落ち着いたのか、熱も下がりすやすやと眠っていた。

そういえば、レンカはサーラに来た頃よりも細くなっている気がする。食欲が出ないといっていた。

「あ・・・・」

目を冷めたレンカは、ユリシャを目があった。

「んだよ、謝らないからな!」

小さな声で呟くレンカの頭を撫でて、ユリシャは頷いた。

「悪かった。元はイヴァルとクローディアのせいだったのだな。二人には室内謹慎を言い渡した」

「・・・・んだよ、ばれたのかよ。だっせぇ、俺」

「レンカ。私が嫌いか?」

「え?」

「私が嫌いなら、ニアの屋敷で暮らしてもいい。寵姫をやめさせる」

レンカは戸惑った。

「・・・・用済みになったら、ポイ捨て?」

「違う!私はお前を手放したくない」

「皇帝だろ。俺は寵姫だろうがなんだろうが俺の勝手にするしー」

「そうか」

ユリシャは、少しだけ明るく笑った。

「では私も勝手にする。寵姫のままだ」

「あーそうですかー。あ、和服また作って!」

「いいぞ。でも、今は食事をちゃんととりなさい」

レンカは顔を紅くした。

「あんた・・・まさか、今まで俺の看病してたの?」

「そうだが?」

レンカは顔を覆った。やっべ、俺顔赤い。絶対赤いよ。

ユリシャは子供みたいに笑ってる。

俺、胸が一瞬キュンとなった。この変態皇帝に。

あ、俺終わってる。

ナムナムチーン。

 




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